〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第66章 牡丹と微熱に魅せられて〖誕生記念〗❀真田幸村❀
「……今のは兄ちゃんが悪いな」
「んな事は解ってんだよ…おい、店主」
「ん?」
「それ買う、いくら?」
「これ、おもちゃの指輪だぜ?」
「いーんだよ、おもちゃでも」
────可愛い、俺だけの美依
俺にもう一回だけ、弁解をさせてくれ。
お前が好きで好きで、どうしようもないから。
熱が胸を焦がす、そして……
赤裸々な想いが溢れ出す。
俺は小箱を握り締め、美依を追った。
『必ず想いを伝える』
そう改めて、心に誓って。
────…………
祭りを抜け、神社も本殿の裏の方まで来てしまえば、静かで人なんて誰も居ない。
少し涼しい夜風が、頬を撫で……
賑やかな声と熱気が少し離れ、俺はようやく息をつく。
美依を追って、方々を探し回って。
俺が美依を本殿の裏で発見した時には、美依は石灯篭の石段にちょこんと座り込み……
ぼんやりと俯いて、小さくなっていた。
「────美依」
俺が声を掛けると、細い肩がぴくりと跳ね。
そして、こちらに振り向いてみれば、美依は目元を赤くして、ちょっと不機嫌そうな表情をしていた。
「……なに」
「独りで走って行ったら、危ねぇだろ」
「関係ないでしょ、ほっといてよ!」
「ほっとけるわけねーだろ」
俺は美依に近づき、隣に座り込む。
そして、一回深呼吸をして……
我ながらぶっきらぼうに、美依に話しかけた。
「……左手、出せ」
「え?」
「いいから、左手」
俺が言うと、美依は若干むっとしながらも、俺の方に左手を差し出してきた。
俺は、その小さな手を、きゅっと握り締め……
その細い薬指に、さっき店で買った『おもちゃの指輪』をゆっくりはめた。
「え……?」
それを見た美依が、大きく目を見開く。
子供のままごとに使うような指輪なら、子供用で小さいんじゃないかと一瞬懸念したが……
でも美依の手は、普通の女より細くて小さい。
そのおかげか、多少は引っ掛かりはしたが、なんとか指にはめることが出来た。