〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第66章 牡丹と微熱に魅せられて〖誕生記念〗❀真田幸村❀
「……それ、欲しいのかよ」
「ちょっと可愛いなーって」
「でも、おもちゃなんだろ?」
「おもちゃでも、なんかいいなぁ……」
「おもちゃが欲しいなんて、ガキだな」
「むっ…別にいいでしょ!」
つい、いつものように口が滑る。
すると、美依が不機嫌そうに眉を釣り上げた。
しまった、今日はあまり怒らせたくない。
折角の二人きりの逢瀬だぞ、しかも誕生日だし。
だから、そんなに欲しいなら買ってやるか……
そんな風に思っていると、店主が苦笑いを浮かべながら、ちょっとからかうように言ってきた。
「兄ちゃん、買ってもいいが…こんなに可愛い恋仲の娘さんなら、後からちゃんと本物を贈ってやれよ?」
(なっ……)
その言葉に、思わず顔が真っ赤になる。
恥ずかしくなり、思考回路が麻痺して。
直後……
俺は余計に拗らせる、決定的な一言を放ってしまった。
「こ、こんなイノシシ女、恋仲の女じゃねーし!」
「はぁっ…?!イノシシ女って……!」
それに反応したのは美依だ。
さらに眉を釣り上げ、ガバッと立ち上がり……
俺を真っ赤な顔で見下ろして、可愛くない口を利いた。
「私だって、こんな失礼な男、お断りだし!」
「おーおー、俺もじゃじゃ馬女なんて御免だ」
「幸村のばか!」
「はぁ…?!馬鹿って言った方が馬鹿」
「〜〜〜……っっ!」
(あ、やべ……)
口がするする滑り、言いたくない台詞が口からついで出て……
それに後悔をする間もなく、美依はさらに顔も目も真っ赤にさせ、唇を震わせた。
そして、ぎゅっと握りこぶしを握ると、少し涙声で吐き捨てた。
「幸村なんか、もう知らないっ……!」
「美依っ…?!」
美依はそのまま方向を変え、走り出す。
止めようと立ち上がったが、すでに遅かった。
美依は人混みを小さな身体で掻き分け、うまくすり抜けて走って行ってしまい……
あっという間に、姿が見えなくなる。
しまったと思っても、すでに美依は居ない。
俺は自分の不器用さ加減に、思わず後ろ頭をかいて、がっくり項垂れた。