〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第66章 牡丹と微熱に魅せられて〖誕生記念〗❀真田幸村❀
「幸村、あっちも行ってみようよ!」
「おい、あんまり離れるとはぐれるぞ」
「あ、金魚すくいもあるー!」
「おーい、俺の話聞いてんのか?」
(すげーはしゃいでるな、可愛い)
あっちへきょろきょろ、こっちへきょろきょろ。
好奇心旺盛な瞳をしながら、美依は興味引くものに目を向けている。
俺と美依は並んで屋台を回りながら、遊戯で遊んだり、色んな物を食べたりしながら、夏祭りを楽しんでいた。
その夏祭りの賑わい方は、半端ない。
屋台も結構な数が出ているし、人もさらに増えてきたし。
子供のようにはしゃぐ美依から目を離したら、すぐにはぐれてしまいそうだ。
「わぁっ…可愛い…!」
と、その時、美依がある屋台の前で足を止めた。
追いついて見てみれば、それは女物の小物を取り扱っている店で…
簪や櫛、巾着、帯の飾りなどが、所狭しと並べられていた。
美依は少し低めの台の上に並べられた小物に、魅入るようにして店前にしゃがみ込む。
俺も釣られて、美依の横にしゃがみ…
その視線の先を、目で追った。
「なんか気に入ったもんでも、あんのか?」
「そうだな…あ!おじさん、この小箱はなんですか?」
「ん?これかい?」
美依が指差した、小さな木製の小箱。
それを、恰幅のいい店の主人が、太い指でひょいと掴んだ。
そして、ぱかっと蓋を開けてくれる。
中に入っていたのは…
木の輪っかに硝子の珠が付いた装飾品だった。
「あ、指輪だ…!」
「指輪なんだが、これはおもちゃだよ、姉ちゃん」
「おもちゃの指輪なんですか?」
「ああ、小さい子がままごとに使うような…うちは子供のものも置いてあるからな」
(指輪…指にはめる輪っかの事か)
どこかで聞いたことがある。
西洋では『指輪』と言う装飾品を、求婚したりする時に恋仲の女に贈るのだと。
美依も女なら、そーゆー物が欲しいのか。
そんな風に思えて、美依を見てみると…
なんだか眩しいような微笑ましいような。
そんな微笑を浮かべて、そのおもちゃの指輪に視線を送っている。
でも、買ったとしてもおもちゃじゃな…
そう思い、しゃがんだ膝に頬杖をついて、美依に言った。