〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第64章 お兄ちゃんじゃいられない!❀秀吉END❀
「別に恥ずかしがること、ないだろ?」
「だって……」
「昨日はもっと恥ずかしい姿も見たんだし」
「……っっ、その事なんだけど、あのっ……」
美依が言いにくそうに、言葉を濁す。
しばらくは唇を噛み、何やら押し黙っていたが…
やがて、観念したように俺を見つめながら、その唇を開いた。
「昨日ね、私酔っ払って……」
「うん」
「朧気には覚えてるんだけど」
「……うん」
「その、ハッキリ記憶が無くて…私、なんで秀吉さんとこうなったんだっけ……?」
「……おい」
嫌な予感はしたが……
まさか本当にあまり覚えていないときたか。
何となく懸念していた事が現実になり、俺は思わず大きくため息をついた。
(だから、酒の勢いは嫌なんだっ……)
泥酔していた美依は、昨日俺に言ってくれた可愛い言葉まで覚えていないと言うのだろうか。
俺は兄じゃないと、何をされてもいいと。
一体どこまで覚えているのか、解らないが……
俺は手を美依の頬に持ってきて、柔らかい頬をむにっと摘むと、ちょっと拗ねたように美依に言った。
「お前な、人を振り回すのもいい加減にしなさい」
「うっ…ごめんなさい……」
「嫌なのか?」
「え?」
「俺とこうなって……嫌ならハッキリ言え」
すると、美依はぶんぶんと首を横に振って。
潤んだ瞳を向け、どこか煽情的な表情で、俺に言った。
「嫌なわけ、ないよ…秀吉さんとこうなれて嬉しい。私、秀吉さんには妹としてしか見られてないと思っていたから…秀吉さんが、私を一人の女として抱いてくれたのが、すごく嬉しいの。逆にあまり覚えていないのが、ちょっと残念なくらいで……」
(美依……)
その真剣で純な眼差しは、嘘を言っていない。
俺達はお互いで『兄妹』と言う壁を張って……
無意識に本音を心の奥底にしまい込んでいたのだ。
酒の力を借りなくては出来なかったのが、少し残念だけれど。
でも、やましい事は、ひとつも無い。
俺達は想い合っていたのだから……
きっかけは『これ』でも、これからまた新しい関係を作っていけばいい。
男と女として、恋仲として。
俺達の全ては、きっとここからだ。