〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第64章 お兄ちゃんじゃいられない!❀秀吉END❀
(だが、正気にならなければ、話も出来ないし)
とにかく、このふわふわ状態をどうにかしなければ。
せめて、まともに話が出来る状態に。
そう思い、俺は意を決すると……
湯のみから一口水を含み、美依の頬に手を当てて、ゆっくりとその唇を塞いだ。
美依の唇を割り、重なった唇から口内へ、冷たい水を流し込む。
美依の喉がごくりと音を鳴らし、飲み込んだなと思ってから、ゆっくり唇を離すと……
美依は口を半開きにさせたまま、なにやら蕩けた表情で俺を見つめてきた。
「あ……」
「お前が飲ませてって言ったんだぞ、酔いは冷めそうか?」
「秀吉、さん……」
「なんだ?」
「さ、冷めないから、もう一口……」
「……っっ」
薄桃色の唇が、水で濡れて艶々と光っている。
それが、俺を誘っているように思えて……
思わずごくりと生唾を飲んだ。
そして、そっと胸元を手で掴まれ、さらに心臓が一回高鳴る。
こちらを煽っているのか、無意識にやっているのか。
その見つめる黒真珠の瞳からは、真意が解らない。
それでも、いつまでも余裕ではいられないと……
張り裂けそうに打つ鼓動が、耳の方まで振動して警告している。
『一線を越えるか否か』を。
「……っお前な、そうやって煽るな……!」
「……っっ」
「もう一口な、もう一口だけなっ…」
俺は半ばヤケクソにそう言うと、再度口の中に湯のみから水を含んだ。
そして、さっきより少し強引に美依の唇を塞ぐ。
するりと水が、美依の唇へと流れ込み……
また先ほどのように、美依の喉がこくりと鳴った。
(……なんで、本当に…こんなに可愛いんだ)
俺と光秀を仲良くさせようとして、はしゃいで自分で酔っ払って。
こんな理性が外れかけの状態の男に、口移しで水をねだって。
馬鹿みたいに可愛くて、本当に参る。
美依の天然は今に始まった事ではないけれど、それでも無自覚に振り撒く色香にやられてしまって……
全てが欲しいと、身体が悲鳴を上げる。
なんかもう、酒でもなんでも流されていいかな。
そんな風に思考回路まで麻痺して……
唇から伝わる熱と感触が、頭の中を霞ませる。