〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第64章 お兄ちゃんじゃいられない!❀秀吉END❀
『美依がお前を選んだのなら仕方ない、俺はその意志に従おう』
光秀はそう言って、少し名残惜しそうに部屋を出ていった。
そして、残された俺と美依。
『人肌恋しい』と言った美依は、ふわふわと微睡みながら、畳に寝転がっている。
赤い顔をして、瞳は泣きそうに潤み、酒に濡れた桜色の唇は艶やかに光って……
その煽情的な表情を見下ろすだけで、堪らない気持ちになってくる。
『私にとって、貴方は兄じゃないから…だから、私をあげてもいいんだもん』
そう、恥ずかしそうに言った美依。
その『貴方』がこの俺を指していると知って、俺の心は歓喜で満ち溢れた。
ずっとずっと、美依のことが好きだった。
妹としてではなく、一人の女として。
美依も俺を兄ではなく、男として見てくれているなら…
『この先』を期待するのは、当たり前の事で。
だがそれは、酔った勢いではないという事が前提ではあるが。
「美依……」
「んぅ~…秀吉、さん…?ふふふっ」
「……酔ってるよな、やっぱり」
このまま肌を重ねてしまうのは、少し躊躇われる。
もし美依が酒のせいで、人肌恋しいなどと言ったのなら……
正気に戻った時、ある意味大事故になってしまう。
初めてなら、尚更だ。
きちんと気遣い、酒での勢いに流されたなんて言われないようにしたい。
「まったく…本当に世話が焼けるな、お前は」
俺は美依をひょいと抱き起こすと、胡座をかいた上に横座りにさせた。
そのまま酒と一緒に用意された水差しに手を出す。
酔っ払った時には、水を飲むのが一番だ。
美依が正気になったところで、もう一度、きちんとその想いを聞いてみよう。
そう思い、水差しから湯のみに水を注ぎ、美依の口元に差し出した。
「ほら、少し水を飲め」
「ん~…いらにゃい……」
「だーめーだ、ちょっと酔いすぎだぞ、お前」
「秀吉さん、飲ませて~……」
「……っお前な……」
何を言い出すんだと、思わず赤面してしまう。
美依は酔うといつもより大胆になるのか…
普段からは考えられないその姿に、戸惑いを隠せない。