〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第63章 お兄ちゃんじゃいられない!〖共通〗❀秀吉VS光秀❀
「人肌恋しいって、意味解って言ってんのか?」
「だってほら〜なんかくっつきたくなる時あるでしょ〜今そんな気分なんらもん…」
「喰われてもいいの意味は、理解しているか?」
「ふふっ、わたしらって、子供じゃないれすよぉ〜」
すると、美依は後ろにコロンと倒れ、畳に寝っ転がった。
そのままふふっと笑い、コロコロと畳の上で身をよじりながら、恥ずかしそうに両手で顔を覆う。
そして、まるで呟くように……
二人の心を鷲掴みにする一言を放った。
「私にとって、貴方は兄じゃないから…だから、私をあげてもいいんだもん……」
「……っっ!」
秀吉と光秀は、同時にごくりと唾を飲んだ。
『貴方は兄じゃない』
それは、お互いが一番聞きたかった言葉だった。
きっと『過保護な兄』のようにしか思われていないだろう。
それは常に頭にあった事。
美依の中ではそれ以上には、まだなれていないと…
まずは、兄からの脱却が第一だった。
しかし、美依が兄と思っていないのなら。
自分を捧げてもよいと、素直にその言葉を受け取るなら。
それならば、今すぐ奪っても構わないと言う意味だ。
問題は──……
『貴方』とは、どちらを言っているのか。
それで、全ての決着がつく。
「美依、貴方ってどっちを言ってるんだ?」
「んん~……?」
「俺か秀吉か、どちらの事を言っているんだ、美依」
秀吉と光秀は畳に寝転ぶ美依を上から覗き込み、その先の答えを問う。
秀吉か、光秀か。
それは究極の二択だ。
この後、美依と愛し合えるのはどちらか。
甘い時間を過ごせるのはどちらか。
二人が固唾を飲んで、答えを待っていると……
美依は顔から手を離し、頬をさらに赤らめ。
言いにくそうにもじもじと手を動かしたが……
やがて小さく決意したように、その潤んだ瞳を一回瞬きさせた。
「私が言ってるのは──……」
そして、美依が唇から紡いだ名前に。
一方は歓喜に震え、一方はがっくりと肩を落とした。
『過保護な兄』から『恋仲』へ。
確かに近づいた距離に、名前を呼ばれた本人は、満足げに笑みを浮かべたのだった。