〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第63章 お兄ちゃんじゃいられない!〖共通〗❀秀吉VS光秀❀
「な、泣くな美依、ちゃんと飲んでるぞ!」
「ううう……」
「美依、煮浸しも中々だ。味は解らんがな」
「光秀、それは慰めてねぇ!」
「仕方ないだろう、俺に料理の感想を求めるな」
「ううう、二人とも仲良くしてくださいっ…!そのためにこの場を作ったのに……」
見れば、美依は大きな瞳に涙を一杯溜めている。
それを見た秀吉と光秀は顔を見合わせ……
そして、お互いバツの悪そうにため息をついた。
美依はお互いを気遣い、この場を設ける事で、少しでも分かち合えればと……
きっとそんなつもりだったのだと、秀吉と光秀はこの時理解した。
ハッキリ言って、仲良くするのは無理。
お互い馬が合わないし、なんと言っても恋敵だ。
しかし──……
美依を泣かせるのは不本意である。
美依が泣くくらいなら、一緒に酒を飲むくらい…そのくらいしても良いだろう。
何度も言うが、仲良くするのは無理だが。
「悪かった、美依。ありがとな、酒まで用意してくれて、料理も作ってくれたんだもんな」
「折角なら、この小さな宴を楽しむか。秀吉、盃を出せ。酒を注いでやろう」
「ああ、悪いな。ほら、美依も機嫌直せ。乾杯でもしよう」
「そうだぞ、美依。美味そうな酒じゃないか」
秀吉と光秀は、それぞれ両端から美依の柔らかい頬をふにっと摘む。
すると、美依は少し顔を上げ、驚きながらも……
ふふっと小さく可愛らしく微笑んだ。
この天然で小悪魔的な所が、本当に参るのだが。
それは惚れた弱みというやつで、なんでも可愛く見えてしまうのは致し方ない事である。
(ああもう、敵わねぇな、美依には)
(まったく、この小娘には敵わんな)
同じ事を心に思って小さく苦笑しながら、ようやく三人で乾杯をした。
その事がよっぽど嬉しかったのか、美依はふにゃふにゃと可愛らしく笑いながら、酒を飲み始める。
その時は下心など出さないと決めたのに……
やはり酒が入ると、どんどん気持ちは高ぶる。
特に好きな女が酔ってくると……
次第にケモノな、悲しい男の性が見え始めるのだ。