〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第63章 お兄ちゃんじゃいられない!〖共通〗❀秀吉VS光秀❀
なんで美依と二人でいるんだ、お前には関係ない、などの敵対心剥き出しの会話がされた後、話題は甘味に移り。
『こっちの方が美味い』
『いやいや、絶対こっちの方が美依が気に入る』
『だったら、今すぐ美依に食べてもらおう』
そんなやり取りが二人の間で交わされ、美依は半ば強引に席につかせられ……
甘味が運ばれてくると、何故か二人とも『食べさせてやる』と、口元に杓子を美依に向けてきた。
(はっきり言って、恥ずかしいっ……!)
美依の内心は、もう火を噴きそうなくらいである。
しかし……
これは食べなくては、二人は諦めないと言う空気が漂っている。
美依は根負けしたように一回大きくため息をつくと。
若干拗ねたように、口をへの字に曲げた。
「一気に食べられないよ、それに喧嘩するなら私は帰りますっ」
「わ、悪い…機嫌直せ、な?」
「悪かった、美依。帰るなど言うな、美味いぞ」
「解ったならいいんです、最初は秀吉さんのから食べるから…あーん」
美依はその小さな口を開き、まずは秀吉が差し出した杓子から、餡蜜を一口頬張った。
すると、途端にふにゃりと幸せそうな笑みに変わる。
それを見た秀吉と光秀が、生唾を飲んだのも知らずに、美依は今度は光秀の杓子から、ぱくりと葛餅を口に入れる。
口に入れた瞬間に、また蕩けるような笑み。
((か、可愛いっ……))
その甘味を頬張る表情は、めちゃくちゃに可愛い。
この世の幸せとばかりに、ふにゃふにゃと笑う美依に、秀吉と光秀は同じ事を思って、ため息をついた。
「おいしーい!どっちも口の中で蕩ける!」
「だろ、美味いだろ?やっぱり黒蜜と餡蜜だな」
「いや、抹茶葛餅だろう。そっちのが美味い筈だ」
「なっ…餡蜜の方が美依はいい顔をしてたぞ!」
「いーや、葛餅だ。美依の蕩けた顔を見ただろう?」
途端に、頑として睨み合う二人。
二人の瞳の間には火花が散り、一触即発の雰囲気だ。
そんな様子を見て、また美依はため息をつくしかない。
なんでこう、仲が悪いのか……
無論、根底は美依自身が理由だとは、さらさら思っていないが。