〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第63章 お兄ちゃんじゃいられない!〖共通〗❀秀吉VS光秀❀
『秀吉さんと光秀さんは、よく似てるよね』
いつだったか、美依がそんな事を言っていた。
それを聞いた秀吉は、最初はふざけるなと思ったが…
やたら自己犠牲が強い所や、何だかんだ面倒見が良い所など。
確かに光秀との類似点は多いかもしれないと思った。
だが、まさか好きな女まで似なくてもいいのに。
そう思い、秀吉は光秀に詰め寄った。
「美依は渡さねぇぞ、お前には」
「それは美依が決める事だ。だが、俺は例え美依がお前を見ていたとしても、こっちに振り向かせる」
「……っっ上等だ、この狐野郎」
「お前はいつまでも兄貴がお似合いだぞ、秀吉」
二人の間に、またしても火花が散る。
それが、恋敵としての争いの始まりだと……
戦いの火蓋が切って落とされた事を意味していた。
────夏は恋の季節
灼熱の太陽が照りつけ、全てを焦がすように
恋心も、焦がれ焦がれて、熱していく
『美依の兄貴分』はいつしか『恋仲』の座を賭けて
まるで少年のように、持て余す熱情を露わにしていくのだ。
────…………
(え…なに、この状況っ……)
それから数日後の甘味屋。
一つの机に、秀吉と光秀と三人で腰掛けながら、美依は変な汗をかいて苦笑いを浮かべた。
自分が座っている向かい側に、秀吉と光秀が並んで座り。
机には、餡蜜の器と、抹茶葛餅の器。
秀吉と光秀、それぞれの杓子に餡蜜と抹茶葛餅が掬われ、美依の口元に向けられている。
つまりは『あーん』の状態だ。
「ほら美依、口を開けろ。この黒蜜がかかった餡蜜は、この茶屋の夏の新作らしいぞ。きっと美味いから」
「何を言う秀吉、この茶屋で一番美味いのは、この抹茶葛餅だ。定番のものが一番美味い」
「なんだよ、光秀。お前味なんか解んねぇだろ?!」
「お前こそ甘い物は苦手だろう、秀吉」
「ええと…二人とも落ち着いて……ね?」
なんでこんな状況になったか説明すると、時は四半刻前に遡る。
秀吉に茶屋に行こうと誘われた美依、二人でその茶屋に行ってみると、美依に土産を選んでいる光秀にばったり遭遇した所から全てが始まった。