〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第63章 お兄ちゃんじゃいられない!〖共通〗❀秀吉VS光秀❀
だが、守りたいものは守れたようだ。
尻もちをつきながら、片腕で美依を抱きかかえ、片手で本が直撃した頭を思わず撫でていると……
膝にすっぽり収まるような形で秀吉に抱きかかえられている美依は、目を白黒させながら、下敷きにした秀吉の方を振り返った。
「え、秀吉さん……?!」
「大丈夫か美依、怪我はないか?」
「だ、大丈夫…ご、ごめんなさい!」
「美依、踏み台を置く時には、下に何も無いか確認しろ。踏み台の脚が本を踏んでたぞ?」
「え、うそ!だからなんかグラグラしたんだ!」
(……この天然っぷり、相変わらずだな)
全く、苦笑しか漏れてこない。
だから、本当に目が離せなくて困るのだが。
まぁ、美依の世話を焼くのは自分で、その役目は絶対他には譲れないけれど。
秀吉はそんな事を思って、また小さく息を吐く。
美依は安土城の武将達に、やたら可愛がられているから、誰もが美依の兄貴分なのだとは認知してる。
みんな、何だかんだ美依を構いたいのだと。
それでも──……
初代兄貴分としては、その座は譲りたくないとこで。
今ではすでに『兄貴』なんて域は越えているのだが。
(こいつは……俺が守ってやりたい)
「なんだ、二人とも。こんな所で桃色の空気か?」
と、その時だった。
明後日の方角からした、からかうような声に、思わず美依の頭を撫でようとした手が止まる。
美依と一緒にそちらに視線を移してみれば、月白色の髪を揺らし、琥珀の瞳を細め……
光秀が意地悪そうな笑みを浮かべ、本棚にもたれかかって立っていた。
「光秀さんっ!別に、そんなんじゃっ……」
「知ってる、お前が踏み台が落ちたのを、秀吉が受け止めてやったのだろう?一部始終見ていたからな」
「解ってんなら、そーゆー言い方やめろ、光秀」
「今の場面だけを見るなら、相当桃色に見えるんだがな、秀吉。仕方ない…ここからは俺に任せろ」
「え?」
すたすたと早足で光秀が二人に近寄る。
そして何を思ったか……
光秀は秀吉の膝の上にいる美依の背中と膝裏に手を当て、ひょいと横抱きにした。