〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第61章 狂華-kuruibana-《前編》❀伊達政宗❀
「美依、ちょっと来い」
「わっ…政宗っ……?」
俺は美依の腕を掴み、そのまま部屋から連れ出した。
こんなに思いっきり掴んでは、美依が痛いだろうとは思ったが。
でもそんなのを気遣う余裕は、俺にはなかった。
爆発した黒い感情に飲まれ──……
心が痛いくらいに軋む。
美依の前で見せていた、余裕と言う名の壁が、脆くも崩れ去っていく。
「政宗、痛いっ……!」
「うるせぇ、それどころじゃない」
家臣達が唖然として俺達を見ていた。
落ちかけていた陽は、すっかり沈み。
真っ暗な闇夜が、世界を支配し始める。
俺の心もまた──……
夜が訪れたかのように、真っ黒に染まり始めていた。
────…………
人気のない庭の隅まで来ると、俺はそこでようやく美依を離した。
だが、逃がしはしない。
美依の身体を木に押し付け、それを囲うように、腕を美依の顔の横で付く。
美依は俺を見ながら、黒真珠のような瞳を揺らし。
理由が解らないといったように、首を小さく傾げた。
「何やってた、二人で」
「え?」
「俺以外の男を押し倒してたな、お前」
「あっあれは……!」
「とりあえず、言い訳は聞いてやる」
俺が低い声で言うと、美依は言葉を詰まらせた。
言えないのか、言い訳すら。
お前が素直なのは知ってる、誰よりも。
なのに……言えないのかよ。
俺はふっと鼻で笑うと、片手で美依の顎を掬い。
その瞳を覗き込みながら、心の声を直接言葉にして紡いだ。
「気持ちいいこと、してたのか?」
「は……?」
「だって、身体も熱いよな、お前」
「そ、それは……!」
「熱を上げるような事、してたんだろ?」
「……っっ!」
俺の言葉に、美依が絶句する。
なんだよ、図星かよ。
よりによって、家臣の一人と……
そんなに俺だけじゃ足りねぇか、美依。
今自分が、どんな目をしているか。
そんなのは、想像に容易かった。
きっと、嫉妬に塗れた、酷い目をしてるだろう。
でも、止まらない。
次から次へと黒い感情が溢れて……
だって、お前がいけないんだろ?