〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第61章 狂華-kuruibana-《前編》❀伊達政宗❀
「美依…………?」
その光景に、俺は思わず絶句した。
公務から帰って、部屋に向かって廊下を歩いていたら、何やら部屋の方から大きな音が聞こえ……
何事かと思って襖を開けたら、美依と家臣が重なるようにして倒れていた。
────いや、美依が押し倒してる?
「……なにやってんだ、お前ら」
「ま、政宗様!」
「ま、政宗……!」
美依と家臣が焦ったように声を上げる。
まるで、絡まるように倒れ込んでいる二人。
俺を見て、顔をひきつらせ……
まるで、見てはいけないものを、見られたと言った感じだ。
……何をやっていた、二人で。
そんな風に抱き合って……何をしていた?
「美依、お前……!」
「きゃっ……!」
俺が美依の腕を掴み、ぐいっと引き上げると、美依は驚いたように声を上げた。
そのまま立たせて、身体を引き寄せ……
間近で美依の表情を伺う。
なんか……少し身体、熱くないか?
それに、目も若干潤んでいるような……
身体から『女』と言うものが滲み出ている気がする。
(…………まさか)
嫌な『確信』を感じ、俺は思わず固まった。
まさか、ここで美依とこいつは……
人知れず、愛し合っていたのではないか。
じゃなかったら、何故あんな風に倒れていた?
美依の身体が熱い理由は?
俺を見て驚いたのだって……
────つまりは、そーゆー事じゃないのか
「…………」
その刹那。
頭の中で、線が一本切れた音がした。
それは、今まで美依に抱いていた、黒い感情。
美依は俺だけを見ていればいい。
他の男には触れさせたくない。
そんな醜い心が、一気に押し寄せ溢れ出した。
美依は、他の男と抱き合って倒れていた。
俺に見られて、気まずそうな顔をしていた。
『女』を曝け出していたのか、美依?
俺以外の男の前で。
その可愛い姿を、晒したのか。
俺しかみてはいけない姿を。
こいつにも見せていたのか。
俺の見ていない場所で。
────お前は、誰の女だ?