〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第61章 狂華-kuruibana-《前編》❀伊達政宗❀
「美依様、ご苦労様です!」
「はい、もう終わりますよ!」
家臣の方が、下から私に笑いかける。
私は踏み台に登り、高い所にはたきを掛けながら、その家臣の方の声に笑って答えた。
長雨も止み、久しぶりに良い天気の今日。
それが絶好の機会と感じた私は、政宗の部屋の掃除に勤しんでいた。
畳だったり、目に付く所はいつも綺麗でも、高い場所だったりは小まめに掃除をしないために、ほこりが溜まりやすい。
だから、こんな時にでも綺麗にしなければ。
綺麗な部屋の方が、きっと政宗も喜ぶはず。
そう思って朝から始めた掃除も、もう佳境だ。
もう陽も落ちてきたし、そろそろ政宗が帰ってくる。
夕餉も支度したいし、そろそろ止めようかな。
そう思って、私は踏み台の上で腰に手を当てると、腰を反らすようにして伸ばした。
「そう言えば、美依様。踏み台に乗って大丈夫ですか?」
すると、家臣の方が少し心配そうに訪ねてきた。
私はふふっと笑うと、腰を伸ばしながら首だけ振り返る。
「大丈夫ですよ、なんでですか?」
「だって、今日女中から聞いたんですよ。美依様が……」
────その時だった。
家臣の方の話に聞き入っていた私は、不安定な足元には全く心を止めず。
思わず後ろに重心を掛けてしまった事で、その足場がぐらりと傾いた。
「あっ……!」
「……っっ、美依様……!」
気がついた時には、もう遅い。
崩れた足場、身体が宙に浮き……
『背中から落ちる』と直感した私は、咄嗟に手を付こうと、身体を横に捻った。
────どさぁぁぁぁっっっ!!
「いった……」
「美依様、大丈夫ですか?!」
「わ、ごめんなさいっ……!」
気がつけば、私は家臣の方を下敷きにして、思いっきり畳に倒れていた。
押し倒された家臣の方が、間近で苦笑いを浮かべる。
私もなんだか情けなくて、苦笑いを浮かべるしかなかった。
でも、下敷きになってくれたおかげで助かった……
そう安堵のため息を付いた瞬間。
音を立てて真横の襖が開き……
襖を開けた人物が、目を見開いて私と家臣の方を見下ろした。