〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第61章 狂華-kuruibana-《前編》❀伊達政宗❀
(────面白くねぇ)
「あっ、政宗様?!」
俺が家臣の手から重箱を取り上げると、そいつは焦ったように声を上げた。
胸が焦げる思いがする。
黒い何かが、喉元までせり上がるような。
熱くドロドロした感情が心を渦巻き、今にも堰を切ってしまいそうな、そんな心地がした。
「これは食うな」
「え、何故ですか?!」
「俺が今、同じのを作ってきてやる。だからこれは食うな、俺が一人で食う」
「へ?!ちょっと、政宗様?!」
家臣が何か言うのも聞かず、俺は取り上げた重箱を持って、その場から立ち去った。
後ろから、なんか文句が聞こえるが……
そんなのを聞いてやる余裕は、その時の俺には無かった。
────黒い感情が、俺を支配して
美依がこいつに向けただろう笑顔とか。
こいつらを思って作っただろう、その経緯が。
やはら腹立たしく思えてしかたなかった。
何故、そんな感情に駆られたのか解らなかった。
別に、美依が誰に甘味を作ったって、構わないじゃないか。
どうして。
どうして、こんなに───………
(────美依は、俺のモンだ)
その感情を、人は『嫉妬』と呼ぶのだろう。
俺は、そんな感情を感じた事は、今まで無かった。
そもそも、そこまで人に執着した事がなかった。
好きなものは、好きな時に愛でて。
触れたい時に触れられれば、それで満足だった。
それなのに、美依だけは他の『好き』とは違って。
いくら愛しても足らない。
俺だけを見ていればいい。
『独占欲』という名の、みっともない感情が……
美依と触れ合うたびに膨れ上がるのを感じていた。
そんな俺は、どうかしていると思う。
でも、今まで感じた事のない感情に戸惑っているのも、これまた事実であって。
どうして、こんなにえげつない感情が生まれるのか。
すでに、自分のものだと解っているのに……
────何故、こんなにまで奪いたくなるのか
未知なる想いは、俺を蝕むほどに広がり。
あと一歩で、それは俺を完全に侵食してしまう。
それが解って……恐怖すら覚えたのに。
たわいない、ある出来事によって。
それは、一気に爆発するのだ。
────…………