〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第61章 狂華-kuruibana-《前編》❀伊達政宗❀
(私ばかり溺れてるみたいで…悔しいなぁ)
私は政宗の腕の中で、そんな事を考えていたのだけど。
思っている以上に、政宗は私を愛していてくれた事。
それに、私はどうして気づけなかったのか、後悔することになる。
タガが外れた『政宗』という人が、どんなか。
もう少しそれを解っていれば、あんな事にはならなかったのに。
その時の私は、政宗の熱を受け止めるのに溺れて。
『それ以上』を求めることに、愚かにも何の躊躇いもなかったのだ。
────…………
「これはこれは、美依様ありがとうございます!」
「いえ、皆さんで食べてくださいね」
「皆喜びます、美依様お手製の甘味ですから」
(ん…?あれは美依と……)
ある日の事。
美依が家臣となにやら親しげに話す姿を見て、俺は思わず足を止めた。
ふにゃりと笑う美依に、これまた嬉しそうな家臣。
美依は人懐っこいから、誰にでも人当たりが良いと言うか…
伊達の家臣団にも、快く思われていることは知っていた。
その事に関して、別に何とも思っていなかったが…
でも、何故だろう。
ああやって、美依が可愛らしい笑顔を振りまくのは、少し面白くない。
(こんな感情、初めてだな。なんか落ち着かねぇ)
美依がぺこりと頭を下げ、家臣の元を離れていく。
それを見て、俺は美依と親しげに話していた、その家臣に近づき、声をかけた。
「よお」
「これは政宗様!」
「美依はなんの用だったんだ?」
「ああ、これを届けてくださったんです。いつも世話になっているから、皆で食べてくださいと…手作りの甘味だそうです」
そう言って、嬉しそうに重箱を見せてくる。
上の蓋を開けてみれば、中には美味そうな柏餅が、所狭しと並べられていた。
美依は何を考えながら、これを作ったのだろう。
家臣達を労うために、そいつらの喜ぶ顔を思い描いたのだろうか。
美依が、俺以外の男を思って。
わざわざ時間を割いて、手作りをして……
それを俺に言うこともなく。
あんなに、にこにこふにゃふにゃ笑って。
────俺以外の男達のために