〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第60章 君色想う、葵の日 ❀石田三成❀
「お財布無いって解った時はびっくりしたけどね」
「う……本当にすみませんでした……」
「ふふっ、大丈夫だよ。結局は買ってくれたんだし」
「それは当然です。お誕生日ですから」
「じゃあ、パッピーバースデーの歌、歌って?」
「はっぴー……なんですか?」
すると、美依様は、何やら可愛らしく歌を口ずさんだ。
聞いたこともない歌、拍子も……
思わず疑問符を頭に浮かべると、美依様はくすっと笑い、それを説明してくれた。
「私がいた時代の歌なの。誕生日おめでとうが、ハッピーバースデートゥーユーってなるんだよ」
「なかなかに難しいですね……」
「やっぱり難しいか、ごめんね」
「いえ、やらせてください」
「え?」
「私なりの、誕生日の祝い方です。一つくらい、皆様が考えたものではない祝い方で貴女をお祝いしたい」
そう、一つ気になっていた。
確かに美依様の誕生日祝いを考えたけど、それは武将の皆様が考えてくれたお祝いで……
私の意見と言えば『逢瀬をする』と言う大雑把なものだけで、あとは私が考えた訳ではないのだ。
なら……一つくらい自分なりのお祝いをしたい。
貴女が望むもので、最高に笑顔にしたい。
そう言ったら、美依様はびっくりしながらも……
本当に嬉しそうに微笑んでくれた。
「ありがとう、三成君。なら、教えてあげるね」
(ああ、この笑顔が見たかった、私は)
美依様が喜ぶ顔が見たかった。
確かに着物も温泉も弁当も、美依様は喜んでくれたけど……
自分の身の丈にあったお祝いもしたいな。
そんな風に思ったから。
これが歌えたら、美依様はきっともっと喜ぶ。
私にしか出来ない、お祝いの仕方だから。
「はい、お願いします」
「出だしがね、ハッピーバースデートゥーユー……」
「はっぴーばあすでーとぅーゆー……」
深夜の温泉で、二人歌を歌う。
顔を酒と蒸気で、赤く染め……
二人だけの誕生日を祝う。
それは、大事な大事な美依様のお祝い。
愛する貴女が生まれた、とても素晴らしい日だから。
これからもずっと一緒に居るという意味を込めて……
精一杯お祝いさせてくださいね。
それが、私の幸せだから。