〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第60章 君色想う、葵の日 ❀石田三成❀
「ねぇ、三成君……」
「……」
「こっち向いて、三成君」
「いえ、合わせる顔が……」
「いいから!」
すると、背後から頭に手が掛かり、半ば強引に俯いていた顔を上げさせられた。
そして、ぐいっと後ろに振り向かせられる。
そこには、美依様の顔が間近にあって……
瞳をきっと釣り上げて、私を見ていた。
「……」
「私、怒ってるよ、三成君」
「そうですよね、失敗ばかりしたから……」
「違う、今の三成君に!なんで背中を向けるの?」
「え……」
私が目を見開くと、美依様はふっと柔らかく笑って。
そっ……と唇を重ねてきた。
びっくりする間もなく触れ合い……
ちゅっと甘い水音を残して、すぐに離れる。
ただ掠めるだけ、少し触れるだけの口づけ。
それなのに──……
私の心の臓は大きく高鳴り、顔は熱を帯びたように火照った。
それは美依様も同じだったのか。
少し赤くなった顔で、私をじっと見つめ、照れたようにくすっと笑う。
「美依、様……」
「私、嬉しかったよ。三成君が私のために色々考えてくれたこと。慣れないのにお弁当まで用意して、呉服屋さんで着物まで買ってくれて…こうして温泉まで連れてきてくれた」
「でも、私は……」
「三成君がいつも以上に頑張ってくれたの、解ってたよ。その証拠に……」
「……っっ」
美依様がふわりと私の髪を梳く。
そして、頭を撫でるように…優しく優しく触れた。
「今日は寝ぐせ、ついてない」
「あ……」
「私の誕生日だからって、身なりも気にしてくれたんだよね?」
優しく優しく、美依様は言葉を紡ぐ。
柔らかい声で、温かい言葉で。
染み入るような──……
そんなじんわりと心に染み渡る、美依様の気持ち。
「確かに失敗したかもしれない。でも、そんな事は関係ないよ。私を想ってしてくれた事が…その気持ちが本当に嬉しいの。今日は生まれてきて、一番素敵な誕生日になった。それは三成君のおかげだよ、本当にありがとう。私…また一つ、三成君がだいすきになった。だから、背中を向けないで。私、もっと愛する人の顔を見たいよ」