〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第60章 君色想う、葵の日 ❀石田三成❀
────その後、どうなったかと言うと
財布は御殿に置きっぱなしにしていたようで、なんと様子を見に来てくださった家康様が、途中まで持ってきてくれ。
道のど真ん中でそれを受け取り、家康様にこっぴどく叱られる羽目になった。
しかも、弁当を手に持ったまま走ったせいで、中身がぐちゃぐちゃになり……
呉服屋から移動して弁当を広げたら、大惨事になった。
その時の美依様のびっくりした顔。
ため息までつかれてしまい……
折角の誕生日に、どうしてこんな失敗ばかり起こしたのか。
自分を悔やんでも悔やみきれない。
少し気をつければ、どれも回避出来たはずだ。
おかげで、温泉に向かう道中は口数も少なく……
美依様に呆れられ、嫌われてしまったかもしれないと。
私はとことん、自己嫌悪に陥ったのだ。
────…………
「三成君、温泉入ろう……?」
「……いえ、美依様だけでどうぞ……」
「私、気にしてないよ、そんなに落ち込まないで」
「いえ…誕生日を台無しにしたのは私ですから……」
美依様の視線が痛い。
私は部屋の隅で膝を抱えて座りながら、小さくため息をついた。
その日の夕刻、無事に温泉宿に着き……
部屋に通されたものの、私の心は晴れなかった。
呉服屋の件に、弁当の件。
折角武将様達が良い意見を出してくださったのに、自分の失敗で台無しになった。
しかも、まだ美依様が本当に喜ぶ姿が見れていない。
本当に駄目な男だと、呆れられてしまったのだろう。
(惨めな事、この上ない…本当にごめんなさい)
心の中で何度も美依様に謝る。
実際の美依様には、謝っても謝りきれない。
やはり、身の丈以上の事をしようとしたから駄目だったのか。
『そんなに詰め込んで大丈夫か?』
あの夜、秀吉様に言われた言葉が、ずっしりと心に沈む。
美依様に喜んでもらいたかった。
そのために、色々やろうと計画した。
でも──……結果はこうだ。
どれも上手くいかず、周りに迷惑をかけた。
計画崩れもいいとこである。
ただただ惨めで…情けなかった。