〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第60章 君色想う、葵の日 ❀石田三成❀
「おら三成、さっさと弁当詰めねぇと、待ち合わせに遅れるぞ!」
「すみません政宗様、寝癖が直らないのです…!」
「お前、そんなの今まで気にしてなかっただろ!せめて詰めるくらいしないと、完全に俺が作った弁当になるだろうが!」
美依様の誕生日の朝。
早朝から材料を持って御殿に現れた政宗様と共に、私はすったもんだしていた。
政宗様はさすがです。
手早く美味しそうな料理を次々に仕上げ……
出来たものを、私が弁当箱になんとか詰めていく。
料理自体は、私は一切やらせてもらえなかった。
やる気はあるのに、残念です。
「ふぅ…なんとか出来たな、良かった」
「なんかぎゅうぎゅうだが、それもいいだろ。ほら、さっさと行ってこい、美依によろしくな」
「はい、本当にありがとうございます」
そうしてなんとか出来上がった弁当を片手に、政宗様に見送られて、御殿を出発した。
待ち合わせは巳の刻。
城の正門の所で待ち合わせだ。
走っていけば、なんとか間に合う。
(美依様、喜ぶといいな)
走りながら、美依様の笑顔を思い浮かべた。
今日一日、ずっと笑顔にしてあげたい。
だって今日は、美依様の大切な日だから。
そのためなら、今日はとことんやってやる。
私は改めてこぶしを握り、待ち合わせ場所に急いだ。
「美依様、お待たせしました!」
「あ、三成君!」
巳の刻、安土城正門。
私が転がるように走っていくと、すでに美依様が朗らかな笑顔で待っていた。
待ち合わせには遅れなかったが、それでも女性を待たせてしまうなんて……
最初から若干、失敗した感がある。
「すみません、お待たせしてしまって…」
「大丈夫、今来たとこだよ。なんかすごい荷物だね」
「はい、お弁当を持ってきたので」
「お弁当?!三成君が作ったの?!」
「政宗様と一緒に作りました、折角の逢瀬なので」
「わぁ…ありがとう!一緒に温泉に行けるだけでも十分なのに、嬉しいな」
美依様が本当に嬉しそうに、ふにゃりと微笑む。
ああ、本当に可愛いな。
この笑顔のためなら、なんでも出来るな。
本当に心底そう思って、私も目元を緩めた。