〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第59章 可憐に華、恋せよ乙女《後編》❀明智光秀❀
「やましいことがあったなら、どうだって言うんですか?!」
「何?」
「だったら私も言いますけどっ……!」
美依はぎりっと唇を噛み。
少し泣きそうな顔になって、俺を見てきた。
小生意気な目の次は、何か不安に揺れるような…
くるくると目まぐるしく変わるその表情に、思わず釘付けになる。
「光秀さんだって、私の知らない女の人を連れて歩いてたじゃないですか…!」
「は……?」
「小柄で、橙っぽい着物を着た、可愛らしい感じの…すごく仲良さそうに寄り添って歩いてたの、知ってるんですよ!」
美依に言われ、改めて記憶を辿る。
小柄の橙っぽい着物を着た女……?
そんな女、連れて歩いたか、しかも寄り添って?
(…………ああ)
一生懸命記憶を引っ張り出し、ようやく一人だけ思い当たる。
確か小柄だった、明るい暖色系の着物だった。
しかし、何故それをお前が気にする?
何故、そのような顔をする?
「あれは大名の娘だ」
「え?」
「大名の娘が安土に来ていてな、公務の一環で城下を案内した」
「そ、そうだったんですか?!」
「信長様と親しい関係にある相手の娘を、無下には扱えないだろう」
俺がそう言うと、今度は呆れたように口をあんぐり開け。
若干放心したように、視線が泳ぐ。
その間抜けた表情に、思わずふっと鼻で笑うと。
俺は片手で美依の顎を掬い、親指で下唇をなぞった。
「俺への当てつけで、男と会ったのか?」
「ち、違っ……!」
「この唇で答えろ、俺の知らない男と会った理由を」
「な、なんでそんな風に怒るんですか?!男友達って言ってるじゃないですか!」
「そのような事、理由になるか!」
「光秀さんだって、女の人と会ってたのに!」
「仕事だろう、お前はそんなに聞き分けのない悪い子だったのか?!」
お互い、噛み合わない会話で声を荒らげる。
こんな風に俺が感情を剥き出しにするなんて……
────お前だからなんだぞ、美依
こんなに不安になるのも、不機嫌になるのも
全部全部、お前だからだ
その理由が、お前に解るか?
俺が依然として己を譲れないでいると……
美依も苛立ちが抑えられないのか、さらに声を荒げ、俺に食ってかかってきた。