〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第59章 可憐に華、恋せよ乙女《後編》❀明智光秀❀
「怪我の心配をするのは当たり前だろう。だが……怪我の心配以上に俺には気にかかる事がある」
包帯をきっちりと止め、美依の足から手を離す。
そして、そのまま美依の肩を掴んで、トンっ…と押した。
ドサッと美依の背中が畳に付いたところで、身体に覆いかぶさり、美依を見下ろすと……
美依は俺の身体の下で、びっくりしたように見上げてきて。
その黒真珠のような瞳を見据えながら、俺は出来る限りの落ち着いた声で問いただした。
「────昨夜男と居たとは、どういう事だ?」
政宗は言っていた。
『美依は針子友達だけではなく、男の知り合いとも会っていたようだ』
男の知り合いとは、一体誰だ?
話の限りでは、城内の俺の知っている武将ではない。
何故、そんな事をした?
俺の知らない内に、男と会うなんて……
悶々と不機嫌な感情が生まれてくる。
こんなに腹立たしい思いは初めてだ。
すると、美依は一回驚いたように目を見開き。
やがて、心底不思議そうに言葉を紡いだ。
「昨夜は針子友達とその恋人の方と、男友達と…みんなでご飯を食べに行ったんです」
「それは政宗から聞いている」
「どういう事も、それだけですが……?」
「その男友達とは、どこの誰だ」
「え?」
「何故、こそこそ会うような真似をする?」
「ちょっ…どーゆー意味ですか?」
どういう意味も、そのままの意味だろう?
俺の知らない所で、知らない男と会って。
俺をこんな気分にしているのは、お前だ、美依。
俺は美依の顔の横に手を付き、さらに瞳を覗き込む。
その黒い瞳には、最高潮に不機嫌な自分の顔が映っていた。
「お前が俺の知らない間に、勝手に男と会うからだろう?何かやましいことがあるのか」
「はぁ?!」
「おかげで俺は最高に気分が悪い」
「………っっ」
すると、美依は絶句したように口をぱくぱくさせ…
顔を真っ赤にしながら、キッと睨んできた。
なんだ、その小生意気な目は。
俺をそのような目で見て、解っているのか?
俺が何も言わず、指で美依の頬に触れると、美依はそれを払い除け……
俺を押し返すように、ぐっと肩を掴んできた。