〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第59章 可憐に華、恋せよ乙女《後編》❀明智光秀❀
「光秀さん……」
城にある美依の自室を訪れると。
美依は驚いたような声を上げ、まん丸い目で俺を見上げてきた。
自分で怪我の手当てをしようとしていたのだろう。
横座りの格好で、畳に座っていて……
足首に包帯を巻きかけのまま手を止め、いきなり襖を開けた俺に下から視線を送る。
「……怪我の手当ての最中か?」
「えっ……」
「政宗から一部始終を聞いている。俺が続きをやってやろう」
「で、でも……」
「いいから、座っていろ」
部屋に入って襖を閉め、美依の目の前にどっかり腰を降ろした。
そのまま、美依の足に視線をやれば……
包帯の隙間から、細い足首が赤く腫れ上がっているのが解る。
(……だいぶ痛そうだな)
「あっ……!」
俺が着物を無遠慮にはらりとはだけさせると、美依はビクッとなって足を縮めた。
その縮こまる足のふくらはぎを掴み、やんわりと動かして、つま先をこちらに向けさせる。
そのまま巻きかけの包帯を一回取り、側に置いてあった軟膏をすり伸ばすように塗っていくと……
美依は足を震わせながら、ぽつりと声を漏らした。
「あ、ありがとうございます……」
「捻挫か、随分腫れ上がって痛そうだな」
「見た目ほど痛くないから大丈夫ですよ」
「友達を庇うもいいが、お前自身が怪我をしては、元も子もないだろう……あまり心配をさせるな」
「心配、してくれたんですか……?」
その言葉に顔を上げて美依を見ると。
美依は真っ赤な顔で、兎のような目で俺を見つめてきて。
可愛い、本当に──……
そう思って、思わず息を飲んだ。
怪我人と言うのを忘れ、うっかり手を出しそうになる。
だが、まだ手を出すのは早い。
美依にきちんと『確認』するまでは。
そう自分に言い聞かせながら、足首に包帯を巻いていく。
『あの事』を美依に問い詰めなければ。
昨夜の夜の話を。
針子友達と飯を食いに行った、それは別にどうでもいい。
だが──……
『針子友達以外』の存在、それは一体どう言う事だ?