〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第58章 可憐に華、恋せよ乙女《前編》❀明智光秀❀
「好きになるのに、理由なんて無いでしょ?だって好きなんだもん、だから一緒にいるだけよ。相手がどんな人間であれ…惹かれちゃったものはしょうがないから。でも、今の彼氏で良かったと私は思ってるよ」
(────惹かれちゃったものはしょうがない)
その友達の言葉は、何故か私にしっくりきて。
私の心の足りない欠片が埋まったような、そんな心地になった。
好きになるのに、理由なんてない。
好きなものは、好きなんだから──……
『美依、いい子だ』
いつも意地悪な光秀さん。
でもそれは優しさの裏返しなんだと知っている。
私が泣きそうな時は、慰めてくれた。
ピンチになった時は、助けてくれた。
いつだって……あの人は私を守ってくれていた。
私は…私はやっぱり。
あの人の事が、好きだ……
「ねぇ、絢さん…」
「どうしたの?」
「今更なんだけど、やっぱり私…」
「あれぇ〜?この前の子じゃん」
「あっ、本当だ。今日は友達連れなの〜?」
その時だった。
私の密かな心の決意を友達に話そうとしかけた時。
場違いな明るい声が響き、私と絢さんはそちらの方に振り向いた。
(あ………)
その姿を確認して、私は思わず固まる。
その明るい声の主は──……
この前私に絡んできて、光秀さんに返り討ちにされた、その人達だったのだから。
────同時刻、安土城
「政宗、まだ残っていたのか?」
「ああ、今帰るとこだ、秀吉」
城中の見回りをしていた秀吉は、書庫を出た所で偶然政宗を見かけ、声をかけた。
政宗は頭の後ろで手を組み、秀吉に向き直ると。
少し秀吉の様子がおかしい事に気が付き、思うがままに疑問を投げかける。
「なんだ、なんかあったのか?」
「いや…美依がまだ帰ってないようだと、御館様が仰っていてな」
「美依が?こんなに遅いのに帰ってないのか?」
「今日、美依は友達と会ってくると聞いてたんだが…さすがに遅いから、ちょっと城下を見てこようかと思ってな」
秀吉の言葉に、政宗は思わず腕を組む。
美依は秀吉の妹みたいなもんだし、まぁ心配するのは解らんでもないと、頷いた。