〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第58章 可憐に華、恋せよ乙女《前編》❀明智光秀❀
「俺も一緒に行く、美依が心配だしな」
「悪いな、政宗。頼む」
「友達と会うって、針子仲間か?」
「なんでも針子仲間と、その恋仲の男と男友達と…複数人で飯を食ってくると」
「男も一緒なのか?」
秀吉の話を聞き、眉をしかめる政宗。
思わずうーんと唸ると……
心に浮かんだ疑問が、ポロッと口から漏れた。
「……それ、光秀知ってんのか?」
「いや、知らんだろ。って……なんで光秀なんだ?」
「いや、ちょっとな……」
「光秀は今、他の公務で出払ってる。ほら、例の大名の娘が安土に来てる件でな。でも、別に知らせる義理もないだろ」
「そりゃそうだが……」
今、美依は男と会ってる。
それが友達の恋仲の男であれ、男友達であれ……
多分その事を光秀が知ったとなれば。
────あの二人、完璧に拗(こじ)れるな
政宗には、確信にも似た予感があった。
何故かと言うと……
美依の気持ちは然り、光秀の気持ちも。
あの焦れったい二人の気持ちは手を取るように解りきっていたからだ。
でも、なんとかしてやると言っても。
本人同士が何とかせねばなるまいと、政宗は勝手に自己完結した。
「ま、なんとかなるだろ」
「ん?政宗、どうかしたか?」
「いや、なんでもねぇ。さっさと城下に行くぞ」
「そうだな、美依を連れて帰らねぇと御館様が心配なさる」
「お前、本当にそれだけか?」
「なんだよ、それ」
「いつまでも兄貴の仮面被ってると、他の男にかっさらわれるって言ってんだよ」
政宗の話に、首を捻る秀吉。
光秀が光秀なら、秀吉も秀吉だな、まったく。
政宗は思わず、心の中で苦笑したのだった。
────政宗の確信にも似た予感
それは、この後見事に的中することになる
光秀は、女を連れて歩いていた。
美依は、男友達と会っていた。
その真意までは、お互い何も知らない。
ちょっとした『勘違い』が生んだ出来事が、大きな波紋となり……
それがきっかけで、二人の距離は開くどころか、一気に急接近するのだが。
それは見事に問題が解決してからの話。
これから起こる『一悶着』の火種は、たった今落とされたばかりなのだ。