〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第58章 可憐に華、恋せよ乙女《前編》❀明智光秀❀
────しかし、この後
私と光秀さんの関係は思わぬ方に転がる事になる
この時、私は光秀さんなんか忘れてやると。
本気でそう思って、次へ進もうとしていた。
まさか、この男友達も交えた飲み会の事で……
私と光秀さんは付き合ってもいないのに、まるで夫婦のような痴話喧嘩が起きる事になるなんて。
そんな事は露にも思わず、私は必死にあの人のことを、頭から追いやろうとしていたのだ。
────…………
「ふうー、飲んだ飲んだ!」
「ちょっと美依さん、大丈夫?」
「大丈夫!絢さんこそごめんね、送ってもらっちゃって。彼氏さんもいたのに」
「いいのいいの、友達の方が大事だし。私は帰る方向一緒なんだから、向こうも勝手に帰るでしょ」
楽しい飲み会帰りで、頭がふわふわしてる。
あの後、飲み会を解散した私達は、それぞれ帰途につき、私も友達の一人と一緒に路地裏を歩いていた。
少し遅くなってしまったし、心配だからと……
友達は彼氏さんと別々に帰り、わざわざ私を送ってくれていた。
本当にありがたい。
私はとてもいい友達を持ったと思う。
夜道を歩けば、少しだけ涼しい風が頬を撫で……
それに酔いを冷まされながら、私は小さく息を吐いた。
(本当に楽しかったな、このままならすんなり忘れられそう、光秀さんを)
『光秀さん』
その単語を心に思い浮かべた瞬間、胸がチクリと傷んだ。
なにこれ、今すごくいい気分なのに。
光秀さんの名前と顔を思い浮かべたら、心が軋んだ。
私の片想いだもの、光秀さんは私の気持ちなんて、知らないんだから。
だから、どんな女の人を連れ歩こうが自由だ。
私には邪魔をする権利なんて、ない。
「ねー…絢さん……」
「ん、どうしたの?」
「絢さんは…どうして今の彼氏さんを選んだの?」
「うーん…そうだなぁ」
私がぽつりと尋ねると、絢さんは考えるように腕組みをし。
やがて、明るくあははと笑いながら答えた。
「解んない」
「え、解んないの?!」
「理由は考えればいっぱいあるだろうけどね、どれもしっくりこないんだ」
絢さんは、困ったように笑いながら。
それでもあっけらかんと、幸せそうに、その理由を教えてくれた。