〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第58章 可憐に華、恋せよ乙女《前編》❀明智光秀❀
(誰…………?)
並んで歩く姿は、とても仲睦まじく見えた。
人混みから、女の人を庇うような、光秀さんの姿。
女の人に話しかける表情も……心無しか柔らかい。
誰、誰、その人。
光秀さんが、そんな風に優しくするなんて。
────足元から崩れそうな感覚がする
今にも地面が抜けて、ガラガラと底に落ちるような
光秀さんの特別な人なのか。
『小娘』ではなく、『女』として見ている人。
光秀さんから、愛を囁かれる人なのか?
そんなのは嫌だ、絶対に嫌だ。
私以外に、そんな風に優しくしないで。
(光秀さんの、馬鹿っ……!)
────私はその日、御殿へ行かなかった
行けなかった。
光秀さんにどんな顔をして会えばいいか、解らなかった。
その時、私の心に沸いた、醜い感情。
ヤキモチ、嫉妬、妬み。
あの女の人を、羨ましいとおもった。
それは、気持ちを認められない私でも。
認めざるえない、そんな風に思った。
『美依』
もっと、あの声で名前を呼ばれたい。
優しくして欲しい、出来れば。
小娘なんかじゃなく、一人の女として見てほしい。
膨れ上がる。
気持ちが、瓶を振った炭酸水みたいに。
私、私は。
光秀さんが、好きなんだ────…………
────…………
「ばかっ、ばかっ、光秀さんの、ばかっ!」
「そうそう、愚痴を言って飲むのが一番だよ!」
「おい、あんまり美依さんに飲ますなよ?」
「うるさいな、女の気持ちは繊細なの、男は黙ってなさい!」
────数日後の夜
私は針子友達数人と、その子達の彼氏や、男友達。
みんなで、お酒を飲みに来ていた。
光秀さんが女の人と歩いていた事にショックを受けた私は、針子友達に泣きつき……
そうしたら『そんな時は飲むのが一番!』と、友達が飲み会に誘ってくれたのだった。
男の子もいるけど、誰に遠慮する訳でもない。
光秀さんだって女の人と居たんだから、私だって男の子と飲んでやる。
半ばヤケクソだった。
まぁだからと言って、その男の子とどーこーなる気は、さらさらないけれど。
私はぱかぱかとお酒を飲み進めながら……
半泣き状態で、針子友達に愚痴っていた。