〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第58章 可憐に華、恋せよ乙女《前編》❀明智光秀❀
(でもさ、そうだとしたって…あの人相手に、どうアピールするの、私)
頭の中で、悶々と悩みが浮かんでくる。
いつもふわふわしてて、掴み所がない光秀さん。
本音もあまり言わないし、喜怒哀楽も少ないから、いいも悪いもどこで判断してよいのか解らない。
しかも小娘扱い……
まるっきり女としてなんて、見られていないのではないか。
(私、光秀さんに女として見られたいのか…無理がある気がするなぁ、トホホ)
自分で自分の考えにツッコミを入れつつ、ウキウキしていた足取りがどんどん重くなっていく。
会えるだけで嬉しいとか。
想っているだけで、十分だとか。
そんなのは、結局綺麗事でしかないんだ。
顔を合わせるなら、意識してほしい。
こうして想うなら、伝わってほしい。
もっと近づきたい、あの人の心に。
(私、やっぱり光秀さんのこと────…………)
「……あれ?」
その時、大通りの角を折れた瞬間。
見慣れた後ろ姿を発見し、私の心臓がトクンと音を立てた。
人並みより、頭が少し高くて。
色素の薄い綺麗な淡色の髪に、白銅色の袴姿。
まるでそこだけに色が集まったかのように、私の視線は惹き付けられ、当たり前のように焦点を結んだ。
(光秀さんっ……)
浮いたり沈んだり一喜一憂していた心が、一気に跳ね上がって、気分が上向きになる。
町中で光秀さんを発見出来るなんて……!
なんて偶然だろう、御殿まで待たなくても会えた。
馬鹿みたいに、鬱々とした心が晴れていく。
私はすぐさま駆け出し、その後ろ姿を追った。
きっと声をかけたら、振り返っていつも通りの不敵な笑みで笑って。
『美依』
あの低く甘い声で、名前を呼んでくれる。
勝手にそんなことを想像し、口元が緩んだ。
────しかし
(え…………?)
光秀さんのすぐ右隣を歩いている人の存在に気が付き、私はピタリと足を止めた。
私より、少し背の低い……小柄な女の人。
綺麗に結われた髪、淡い杏色の着物。
その人は、下から光秀さんを見上げ……
何やら可憐に可愛らしく、微笑んでいた。