〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第58章 可憐に華、恋せよ乙女《前編》❀明智光秀❀
────ハッキリ言おう、今の私には
『明智光秀』と言う単語は、禁句だ……!
「どうした、真っ赤になって」
「な、ななななな、何でもないからっ!」
「あんなに光秀を熱っぽい目で見つめて、何でもないって?」
「それ以上言わないで、政宗のばか!」
(うー…私がなんかおかしい……!)
なんで光秀さんの名前を聞くだけで、こんなにドキドキするんだろう。
熱っぽい目で見つめて……なんて。
一体私は、どんな顔をして光秀さんを見ていたんだろうか。
こんな気持ちになるのは、心当たりがある。
城下に出かけ、男達に絡まれていたところを光秀さんに助けてもらい……
普段触れない優しさなんかに、触れたモンだから。
だから、きっと気持ちが追いつかないんだ。
あの光秀さんが、すごく優しかったから……
『美依、怖かったな、大丈夫か?泣かないのは、偉い子だぞ』
そう言って、頭を撫でてくれた光秀さん。
お城まで送ると、ずっと手を繋いでいてくれた光秀さん。
『────汚い手で、この娘に触れるな』
そう言って、男達に凄んだ時も。
すごい、守られている感じがして……
「すごく、すごく、カッコよかったなぁ……」
「誰が格好良かったんだ、美依?」
「え?」
その時。
突然耳元に吹き込まれた、甘く危うい響きを持った声に、私は思わず俯いていた顔を上げた。
その途端、絡み合った視線に思わず目を見開く。
黄金色の宝石みたいな、綺麗な瞳。
それは意地悪く動き、私を頭一つ分上から見下ろしていた。
「み、みみ、光秀、さんっ…!あっちで秀吉さんとお話してたんじゃ……!」
「政宗が呼びに来たぞ。美依が羨望の眼差しを向けていると言うから……」
「ま、政宗ぇ〜〜〜っっ!」
「そのように見惚れるほど、俺はいい男か?」
「ち、違っ…いえ、違わなくない、いえ!やっぱり違っ……!」
いつものように、からかわれているだけなのに、私はやっぱり何か変だ。
光秀さんの全てを見透かすような、切れ長の瞳。
それに、心を丸ごと見られているかのような心地にさせられる。
見られたら、恥ずかしいと。
こんなに光秀さんばかり考えているのが知られてしまいそうで、頭から火を噴きそうだ。