〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第58章 可憐に華、恋せよ乙女《前編》❀明智光秀❀
『大丈夫か、美依。怪我などはしていないか?』
あの日から、私はなんかおかしい。
城下に出かけた時、変な男達に絡まれたところを、なんとあの光秀さんが助けてくれたのだ。
いつもは、私に意地悪ばかり。
飄々としていて、何考えてるか解らなくて……
でも、あの日の光秀さんは、少し違った。
男達を追い払った時の、男らしい振る舞い。
私を庇ってくれた時の、大きく頼もしい背中。
そして──……
怯えた私に差し伸べられた、骨張った優しい手。
私を守ってくれた大きな手は、心の底から安心させ、とてもとても頼もしいと思った。
そんな、彼の意外な一面を見てからと言うもの。
私の心臓が、なんだかとても騒がしい。
ドキドキして、なんだかとてもドキドキして。
考えたくないのに、頭で光秀さんばかり考えてる自分が居る。
これってまさか…まさかね?
そんな訳ないよ、あの人に限って。
────でも、気になる
パンク寸前の私の心、そんな心をあの人は知らない。
いつものように、私をからかって、意地悪して……
そんな貴方は、ふわふわと漂う雲のようだ。
掴み所がない、いつも私の手をするりとすり抜けて。
ねぇ、私は『小娘』なんかじゃないよ。
一人の女なの、貴方と対等なの。
だから、私に素顔を見せて。
その奥底に隠した、感情をさらけ出して──……
「美依、おーい、美依?」
皐月晴れの、今日はいい天気。
私は名前を呼ばれたような気がして、はたっと瞬きをした。
気がつけば、政宗が私の顔を覗き込んで……
不思議そうに、その蒼い目を丸くさせていた。
「あー…政宗……」
「どうした、ぼーっとして。具合でも悪いのか?」
「何でもないよ、考え事してただけ」
「……光秀を凝視してか?」
「へ?!」
『光秀』
その名前を聞き、反射的に上擦った声が出る。
凝視してたって……
私、気がつかない内に光秀さんを見てた?!
その事を指摘され、見る見る顔が火照った。
確かに少し離れた先では、光秀さんが秀吉さんと何やら話しているのが解る。
それを、知らず知らずに目で追っていたと言うのか。
まるで心の内を晒されたような感覚に……
私は恥ずかしくなり、思わず両手で頬を覆った。