〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第57章 〖誕生記念〗二人だけの誕生日《後編》❀織田信長❀
バリバリ……ドドォォ────ンッッ!!!
「……っ!」
その時だった。
突然、真上でものすごい轟音がなり──……
どこかに雷が落ちたような音がした。
刹那。
────ピシャアアァァァァァっっ!!
「あっ……!」
目の前に閃光が走り──……
真っ白になったかと思ったら、視界がぐにゃりと歪み始めた。
そう、いつしかと同じように。
(こ、これは……!)
視界がぼやけはじめ、真っ白になり。
身体がふわふわと宙に浮く感覚がする。
「貴様っ……!」
目の前で、信長様がびっくりしてる。
その視界すらも、だんだん遠ざかり始めた。
(ああ、私、もう帰るんだ、信長様の元へ……)
頭の中で、妙に冷静にそう思った。
そう、これはタイムスリップの時と同じ感覚。
きっと私はこのまま、また飛ばされる。
でも、伝えなきゃ、この子に。
しばしのお別れを。
また独りにしてしまう事に、詫びを──……
「ごめんなさい…私、帰る時が来たみたい……!」
「貴様、これは一体……!」
「巻き込まれちゃうから、離れて!突然現れて、突然去って、ごめんなさい……!でも、楽しかったよ、ありがとう信長様……!」
必死に言葉を紡ぐ。
すると、頭の良い信長様は、突然別れが来たのだと、理解してくれたようだった。
絡めた小指と、反対の手で私の手を包み、そして……
くしゃっと泣きそうに顔を歪め、言葉を放つ。
「貴様は突然現れて、本当に突然去って行きおって……!覚えていろ、次に会った時は、貴様の全てを奪う……!」
「はい、覚えておきます、奪ってください……!」
「最後に、最後に聞かせろ……!」
「はいっ……」
「貴様の、名は……?」
『私の、名前は────…………』
────瞬間、嵐を切り裂く風が薙いだ
風は全てを巻き込んで、舞いあげる。
繋いだ小指も、するりとすり抜け……
そして、身体が消えていく。
光に包まれ、全て飲み込まれる。
最後に私が見たもの、それは。
少年である信長様が、はらりと零した。
一粒の、涙だった。