〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第57章 〖誕生記念〗二人だけの誕生日《後編》❀織田信長❀
────ザァァァァ……ゴロゴロゴロ……
外で、雨風が吹き荒ぶ音がする。
それに雷の音が混じり、雷はどんどん近づいているようで……
その音が、やたらクリアに耳の中に入ってきた。
けれど、そんな音よりも。
少年信長様に押し倒された事実に、次第に鼓動が早くなり。
自分の心臓の音が肌を振動して、びりびりと伝わってくるのが解った。
「信長、さ……」
「男と女はこうするものだと、誰かが言っていた」
「……っっ」
「男が女を組み敷いて、躰を繋げて……好きな女を奪いたくば、力づくで自分のものにしろと」
「すきな、おんな……?」
たどたどしく、信長様の言葉を復唱する。
すると、少年信長様は私の目を真っ直ぐ見据え。
たった一言。
なんの不純物もない、純粋な胸の内を──……
私に、ぶつけてきた。
「────貴様が、好きだ」
(……っっ!)
瞬間、心臓が爆発しそうなくらい高鳴る。
私が好きだと、少年の信長様が。
嘘だ、嘘に決まってる。
だって会って間もない、きっと気の迷いだよ。
そう思った私は、顔を真剣に見下ろす少年を、からかうように笑うしかできなくて。
小さく、くすくすと笑いながら、私は信長様に答えた。
「大人をからかっちゃダメですよ」
「揶揄ってなどいない、本気だ」
「だって今日会ったばかりなのに、そんなの……」
「時間など関係ない。俺は貴様の飯をもっと食べたいと思った。貴様に想い人が居ると解った時、腹立たしかった。自分の物にしたいと…そう思った。それは…好きと言う感情ではないのか?」
「……っっ」
痛いくらい純粋な感情をぶつけられ、息が詰まる。
信長様は……そんな風に思っていたの?
『可笑しな女だな、貴様は』
そう言った信長様は、呆れながらも嬉しそうだった。
少し寂しげな顔も、私の料理で笑顔になった。
きっと、信長様は優しさに触れて嬉しかったんだ。
────でも、それはきっと恋じゃない
寂しいと思った時、優しくしてもらえたから……
だから、きっと恋だと勘違いしたんだ。
どうしたら私が振り向くか解らないから。
それならば、力づくで自分のものにするだなんて。
きっとそんな言い方しか、出来ないんだよね?