〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第57章 〖誕生記念〗二人だけの誕生日《後編》❀織田信長❀
「それは、どのような男だ?」
「信長様?」
「将来…め、夫婦になるのだろう?」
「そ、そうです、けど……」
『夫婦』と言うのが少し恥ずかしかったのか、信長様は少しだけ口篭った。
なんでそんなに必死に聞くのか、解らなかったけど。
でも私は、信長様を心に描き……
思いついたままを、口で紡いでいた。
「とても優しい方ですよ」
「それだけか……?」
「優しくて、脆いけど強い。自分の大望ために、平気で人も殺すけど…それを全て受け止める器と潔さと、情を持った人です」
最初は、なんて冷たい目をする人だろうと思った。
笑いながら刀を振るい、血も涙もない人だと思った。
でも……そうじゃなかった。
あの人は殺した人の分まで『生』を受け継いで、それを決して無駄にはしないと……
そのために、自分の弱い部分を凍らせた、とっても優しい人だった。
あの人は、誰よりも寂しくて温かい。
だから……私はあの人に惹かれた。
「……」
私の口から次々に出る信長様の話を、当の本人である少年は、静かに聞いていた。
それは、未来の貴方なんだよ。
そう言ってしまいたかった……言えないけれどね。
すると、少年信長様は掴んだ私の手首を、さらにぎゅっと力を込めて握り……
なんだか羨望を含んだ眼差しを、私に向けてきた。
「……羨ましい、その男が」
「え……?」
「そのように貴様に想われて…貴様の作る上手い料理を毎日食えるのだろう?俺は……」
「信長様……?」
「俺は、貴様の飯が好きだ。毎日食いたいと思うくらいに」
思わず、その言葉に目を見開く。
こちらを見つめる少年の紅い瞳は、なんだか熱っぽく、情を帯びていて……
それはまるで、恋情のような。
そんな勘違いを生むような、そんな危うさを孕んだ眼差し。
私がびっくりして、見つめ返していると。
信長様の手から、コロンと酒杯が落ち、その手が私の肩に掛かって──……
「────…………!」
気がついた時には、私は床に背をつき、天井を見上げていた。
その見上げた視界には、真っ赤な顔をした少年の顔が映り込み……
私の肩をぐっと床に押さえつける、その華奢な手は有り得ないくらいの力が掛かっていた。