〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第6章 境界線のジレンマ《後編》❀徳川家康❀
「家康、違うの……」
「え……?」
「家康も、謝る必要なんて、ないっ……」
美依の手が、そっと身体に回される。
そして、胸元に顔を埋めるようにして……
美依はぽつりぽつりと話し始めた。
「私、解ってたの。家康が私の事、すごく大事にしてくれていた事。だから、私に手を出してこない事も、ずっと優しく見守ってくれていた事も」
「美依……」
「でも、それが少し寂しくて、私が女の子として魅力ないからかなぁとか…悩んでて。だから、昨日家康があんな風に求めてくれて、すごく嬉しかったの。でも、私あまり経験が無いから、恥ずかしくて……」
「…そうだったの?」
「意識飛ばすまで感じた事、恥ずかしくて、家康の顔が見れなくて……だから、口も利けなくて、本当にごめんなさい。家康、嫌な思いしたかなって、すごい…反省した」
(この子は、本当にもう……なんなんだ)
そのいじらしく、呆れるほど可愛い理由に、胸が熱くなる。
美依への愛しさが募って……
そのまま肩を引き、美依を腕の中に閉じ込めた。
ぎゅっと抱き締めれば、美依の温もりが移り……
途端に幸せが溢れて、止まらなくなる。
美依が……可愛く見えすぎて、苦しくなる。
「……ばかだね、美依は」
「家康……」
「俺はあんな風に美依を抱いて、傷つけて……もう嫌われたかもって、すごく怖かった。濡れた美依に煽られて、理性飛んだ自分が情けなくて」
「……っっ」
「あんたに魅力が無いわけ、ないでしょ。可愛くて可愛くて、しょうがなくて……ずっと一歩踏み出せずにいたのに。俺は、ずっと美依が欲しかった。ずっと…美依を抱きたいと思っていたんだ」
素直に心の中を晒せば、美依も背中に腕を回し、ぎゅっと抱きついてきた。
お互い、自分一人でもやもやして。
悩んで、空回りして……
素直に口に出してしまえば『次の一歩』なんて、容易く踏み出せた事。
それに気が付き、思わず苦笑してしまう。
暴走した事は、決して許される事ではない。
でも、美依は嫌がってはいなかった。
嫌われていなかった、と。
それだけでも安心して、尖った心が和らいでいく。