〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第6章 境界線のジレンマ《後編》❀徳川家康❀
「い、家康…っ!」
「美依、身体大丈夫…?」
「………っっ」
(怯えてるな、やっぱり……)
ゆっくり身体を起こして、美依に向き合う。
謝らなくては、昨日の事を。
もう二度とあんな事はしないと。
もっと、もっと美依を大切にするからと伝えねば。
そう思って、こぶしをぎゅっと握る。
もう、嫌われているかもしれない、それでも。
───美依が好きだと、伝えないと
「美依、昨日は…」
「家康、昨日は、ごめんなさいっっ!!」
(……へ?)
瞬間。
開口一番で美依の発した言葉に、思わず面食らって、美依を見つめる。
美依はまるで泣きそうに、目を真っ赤にして、こちらを見ていて……
その必死な姿に、思わず心臓が跳ね上がった。
「美依…?」
「昨日はごめんなさい、意識飛ばしちゃって…しかも、帰る時も口を利かなくて。態度悪かったよね、家康はお城まで送ってくれたのに」
「え、ちょっと待って…」
「これからはもうちょっと頑張るから…こんな風に体調崩さないように、もっと頑張るから…」
「!?」
ちょっと待った。
美依は一体、何を言っているのだろう。
謝るのは、こちらの方なのに。
あんなに美依を激しく貪って。
意識飛ぶくらい喰らい尽したのに…
何故、美依が謝るのだろう。
「待って美依、違うでしょ?」
美依に近づき、その肩を掴む。
美依は一瞬びくっと身体を強ばらせたが…
特に抵抗もせずに、見つめ返してきた。
濡れた、黒真珠の瞳。
それは純粋無垢で、穢したはずなのに、ちっとも穢れてなんかいない。
「謝るのは、俺の方だよ。ごめん…あんな山小屋なんかで、みっともなく欲情して。しかも、意識飛ばすまで抱いて…」
「家康……」
「俺達、初めて身体を重ねたのに…あんな貪るみたいに激しく奪った。全然美依の事、思いやれてなかった。初めてならもっと、場所とか考えて、優しくしてあげなきゃいけなかったのに…本当に、ごめん」
精一杯、詫びの言葉を紡ぐ。
こんなんで、許してもらえるとは思ってないけれど。