〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第56章 〖誕生記念〗二人だけの誕生日《前編》❀織田信長❀
「それで、貴様は何故上から降ってきた。何奴だと言っただろう、俺の問いにも答えろ」
信長様の問いかけに、思わずじーっと見てしまっていたのに気が付き、ハッとなる。
頭の中で整理すると。
私はワームホールに巻き込まれ、タイムスリップして……
信長様の少年時代に飛んできてしまったと。
つまりは、そーゆー事だよね?
(でも、そんな事言ったら、余計変な女だと思われるかも!)
そう思った私は急いで手をぶんぶんと振り。
一生懸命『上から降ってきた言い訳』を少年信長様へと説明した。
「木から落ちたんです!ほら、この高い木の上の方でお昼寝していて、滑って落ちたんです、はいっ!」
「……」
(ああー…すごい怪しんでる……!)
ジト目で睨まれているのが、いたたまれない。
でも、タイムスリップしてきたなんて説明したって、信じてもらえないに決まってるし……
しかし、私、言い訳下手!
そんな風に思って、思わずしゅーんと小さくなると、小さくため息がついたのが聞こえ。
信長様はすくっと立ち上がり、腕を組んで私を見下ろした。
「まぁ、何でも良いが貴様が上から降ってきたせいで、狙っていた兎が逃げた。どうしてくれる」
「うさぎ?」
「今日の晩飯にする予定だった。雲行きが怪しくなってきたのでな、雨が降る前に獲物を捕まえる予定が……どう責任を取る、貴様」
(雨が降る前にって……あ)
信長様に言われ、空を見上げてみれば。
鉛色の空からは、今にも雨が降り出しそうになっていて……
遠くで小さく雷が鳴っているのが聞こえた。
もしかして……あれはワームホールの雷?
もし、また嵐にあってしまえば、もしかしたらまたワームホールが開いて、私は信長様の元へ帰れるかもしれない。
漠然とだが、そんな予感があった。
何故私がこの時代に飛ばされたかは解らないけど。
とりあえず、目下の問題は……
(逃がしたうさぎの責任、どうしよう!)
なんか、すごい怒ってるし!
夕ご飯、逃がしちゃったんだもんね……
なんで信長様自らがうさぎを捕まえて、夕ご飯にしようとしてたのかは、気になるけど、とりあえず置いといて。
私はうんうん頭を捻り、捻っているうちに、さっき交わした会話での『ある事』に私は気がついて、目を見開いた。