〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第56章 〖誕生記念〗二人だけの誕生日《前編》❀織田信長❀
「いきなり上から降ってきたかと思えば、そのように凝視して無礼な女だな、貴様。何奴だ」
その偉そうな物言い、まんま信長様って感じだ。
上から降ってきたって、確かになんか放り出されたけども。
そう思い、改めて周りを見渡す。
そこは、どこかの林の中のようだった。
高い木が周りには生い茂り、それ以外は何も無い。
時折、バタバタと鳥が羽ばたく音が聞こえ、それがやたらと鮮明に耳につく。
安土のどこかかもしれないが、ぱっと見た感じでは見覚えがない場所だった。
(私、信長様と天主に居たのに、いきなり目の前が真っ白になって、視界がぐにゃっと歪んで……)
改めて記憶を一生懸命辿る。
私の思い違いでなければ……あれはタイムスリップしてきた時の嵐に、とてもよく似ていて、そして。
あの目眩のした感じも……
あれは、私が戦国時代に飛んできたものと、全く一緒だった。
それが、意味することは、つまり。
(────私きっと、またタイムスリップしたんだ)
「すみません、ここはどこですか」
「は?那古野城近くの林だが」
「那古野城…ちなみに今は何年の何月何日ですか?」
「貴様、頭でも打ったか。永禄十一年、五月十二日だ」
永禄……
天正ではないという事は、本能寺の変の前なのか後なのか。
この時代の年号はさっぱり解らない。
しかし、私はある予感がして、目の前の少年を見つめた。
この物言いや、雰囲気や……
私の考えている事が正しいならば、今はきっと『本能寺の変の前』だ。
私はゴクッと唾を飲むと。
改めて目の前の信長様そっくりな少年に問う。
「貴方の、お名前は……?」
すると、少年はますます怪訝な表情を浮かべ。
私の考えを確信させる、一言を放った。
「────今は元服して、織田信長と名乗っている」
(…………っっ)
目の前にいる少年は。
後に天下を目指し、覇王として名を轟かせ。
やがて、本能寺に飛ばされた私と出会い、そして。
恋に落ちて、生涯を共に生きていこうと誓い合う。
私の……運命の相手。
優しくて、脆くも強い。
織田信長様、その人なんだ────…………