〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第56章 〖誕生記念〗二人だけの誕生日《前編》❀織田信長❀
「嫌ぁぁぁっ!信長様…………っっ!!」
私は遠ざかる視界の中、必死で腕を伸ばし、何かを掴もうともがいた。
あの人を置いて、現代なんかに帰れない。
ずっと一緒に生きていくと約束した。
私があの人を温めなければならないのに……!
しかし、無情にも視界はぼやけ、見えなくなっていく。
あの人の姿は疎か、天主すら見えない。
その閃光は私を包むかのように、さらに白さを増し。
私の全てを、奪っていった。
私は抗う術もないまま────…………
その白む光に飲まれていった。
────…………
どっしぃぃぃ────んっっっ!!
「きゃあっ!」
「うわっ……!」
私の身体は突然宙に放り投げられ。
そのまま落下すると、何かにぶつかった。
────いや、感覚的には受け止められた?
しかし、落ちた弾みで身体で何かを潰して、下で悲鳴が上がったような。
私はぎゅっとつぶっていた目を、恐る恐る開いた。
(あ………)
私は誰かを下敷きにして倒れてしまっていた。
身体の下に、温かい何かがもぞもぞと動いているのが解る。
「ご、ごめんなさい…!」
急いで上半身を起こしてみると。
下敷きにしてしまったのは、さほど私と体格が変わらない男の子だった。
痛そうに顔を歪め、ちょっと頬が赤くなってる。
しまった、私の重みで、圧迫してしまっていたか。
「ごめんなさい、大丈夫……?」
「なん、だ…貴様……」
(え、貴様?)
その言い方に、思わず心臓が跳ね上がる。
すると、男の子も痛そうに上半身を起こし…
腕や肩を回しながら、私をぎろっと睨んできた。
(えっ………?!)
瞬間、最高潮に私の心臓が高鳴った。
綺麗な真紅の宝石のような瞳。
まだ幼さが残る、整った綺麗な顔立ち。
無動作に伸びた艶やかな黒髪はひとつに束ね、黒い簡素な着物を身にまとった姿。
その面影は、私の愛したあの人───………
織田信長様に、とてもよく似ていた。
(信長、様……?)
私が思わずまじまじと凝視していると…
その信長様に良く似た少年は、怪訝そうに眉をひそめ、いかにも怪しんでいるように私に尋ねてきた。