〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第6章 境界線のジレンマ《後編》❀徳川家康❀
(可愛い……なんの夢、見てるんだろう)
小さく苦笑し、林檎を切り終わると。
そのまま手拭いで手を拭き、美依の方に向き直った。
安心しきった、あどけない寝顔。
それは、狼な自分を目の前にしていると解っていても、見せてくれるのだろうか。
「美依……」
思わず寄り添いたくなって、美依の隣に寝転ぶ。
肩肘を立てて頭を支え、もう片腕は美依を包み込むように……
そっと布団の上から、美依の身体に回した。
ほかほかと伝わってくる、美依の温もり。
それを感じても、昨日のようなどす黒い感情は生まれてこない。
むしろ、もっと守ってやりたい、と。
いつも美依に抱いていた、そんな愛しい気持ちがせり上がってきて……
思わず目頭が、じんと熱くなった。
(美依、本当にごめんね……)
美依の『女』を感じ、欲情して暴走した自分。
その肌に触れたいと。
もっと美依を感じて、そして自分を感じさせて啼かせたい。
その欲望のためだけに、この華奢な身体を貫いて。
そして腰をガンガンに振って、注ぎ込んだ。
美依は涙目で、可愛い声で喘いで……
そんな乱れた姿は、確かに望んでいたものだったけど。
でも、あんな風に我を忘れて、美依を求めて、繋がりたかった訳じゃない。
もっと、たっぷり甘やかして……
トロトロに蕩かしながら、愛したい。
それが、美依と繋がる時の、一番の理想の姿だった。
「……もう、そんな事思っても、遅いかな」
ふわりと美依の額の髪を梳いて、頭を撫でる。
こうして眠っている時なら、いくらでも謝れそうな気分になってきて。
思わず身を寄せ、その白い額に唇を押し当てた。
すると、美依が小さく身じろぎ。
ふわっと長いまつ毛が開かれた。
「…………?」
(あ、起きた)
美依はふわふわとまどろみながら、しばらく瞬きを繰り返していたけれど。
寄り添うように寝転ぶ、こちらの顔に焦点が合った瞬間。
がばっと飛び起きて、布団を掴みながら後ずさりし、目を白黒させた。