〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第55章 尋常に勝負!-秘密の恋文-❀家康END❀
「光秀さん」
「どうした」
「あんたには感謝してますが、美依は誰にも渡さないので、それは覚えててくださいね」
「……」
すると、光秀さんは一瞬目を見開き、次の一瞬で憂いを帯びたように瞬きをすると……
またいつもの、人をからかうような目つきになって。
ニコニコと俺の顔を覗き込んできた。
「仕方ない。では、正々堂々奪いにいこう」
「なっ…本気で言ってるんですか、それ」
「本気だと言ったら?」
「絶対負けませんよ、美依は渡しません」
「冗談だ、ムキになるな」
「まったく、もう……」
「あ、光秀さん!」
と、その時、お茶を抱えて、美依が戻ってきた。
ニコニコと相変わらずの呑気な笑みを浮かべ、口の辛いのはすっかり元通りになったようで。
こんな子一人に、大人の男三人が振り回されて。
ある意味この子は、悪魔なのかもしれないな。
……いや、振り回されたのは、大人の男四人か。
「美依、口の中、大丈夫?」
「大丈夫、それより家康……」
「ん?どうしたの?」
「家康、邪魔するぞ」
「?!」
戻ってきた美依に続いて姿を現したのは、政宗さんと秀吉さんだった。
政宗さんは手に木刀、秀吉さんは大きなスイカを抱えて…
美依に続き、俺と光秀さんの居る縁側に、二人してどっかり腰を下ろす。
なんなんだ、この顔ぶれ…
そう思って二人をジトっと睨むと、政宗さんは変わらずの不敵な笑みで。
秀吉さんからスイカを受け取ると、それをぽんぽんと叩きながら美依に言った。
「美依、このスイカでスイカ割りするぞ」
「スイカ割り?」
「何を突然…」
「いいスイカが手に入ったんだ、ただ食ったんじゃ面白くないだろ?」
「へえ…それは面白そうだな、政宗」
政宗さんの話に乗ったのは、意外にも光秀さんで。
秀吉さんは、政宗さんの相変わらずの突拍子もない発案に、心配で付いてきたってとこか。
いきなり御殿にスイカを持ち込んで、スイカ割り…
これは俺達を邪魔しに来たんだか、何なのか。
単に『楽しい事をしたいだけ』なのか。
その真意はさっぱり解らないが…
それでも、政宗さんの話を聞いて目を輝かせた美依を見たら、何も言えないんだけどね。