〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第55章 尋常に勝負!-秘密の恋文-❀家康END❀
「ほら…やっぱりむせた。それは特に辛い唐辛子だって言ったでしょ」
「うー……家康が普通に食べてるから……」
「お茶でも持ってこようか?」
「自分で飲みに行ってくる…あー辛い〜……!」
────晴れた日の、御殿の縁側
美依が口を押さえ、涙目になって台所に走る。
俺は小走りでかけていく美依の後ろ姿を見ながら、思わずくすっと苦笑いをした。
今日は美依と御殿の縁側でスイカを食べている。
こうしてスイカを食べるのは、あの種飛ばしをやった日以来か。
俺がいつもかけている唐辛子を、私もかけたいとか美依も言い出して……
かけて一口食べたら、涙目になっていた。
可哀想だけど、本当に可愛いったらありゃしない。
「幸せそうだな、家康。何よりだ」
その時。
美依が台所にかけていった直後。
庭先に飄々と現れたのは、色素の薄い髪に、黄金の瞳。
俺や秀吉さんや政宗さんに、例の争奪戦を吹っ掛けた張本人、光秀さんだった。
光秀さんは、縁側の俺の横に座ると、ひょいと長い腕でスイカを取り、相変わらずの腹の解らない笑みを浮かべてきた。
「聞いたぞ、お前が文を手にした時の話」
「ちょうど名前の部分を濡らしたんだろって言う事なら、からかっても無駄ですよ」
「濡らしてお前、半泣きになったと聞いたが?」
「は……?!誰が言ったんですか、それ」
「政宗だ」
「ああもう、あの人は……」
(名前の件……よっぽど悔しかったんだな、あの人)
美依の口から二人にハッキリ『家康と書いた』と言ってもらえた事で、二人は美依を諦め、俺達の仲を認めてくれたようだった。
いや…諦めたかは、多少疑問だが。
二人いると結構割って入ってきたりするし……
この人、光秀さんも然りである。
(まさかとは思うけど…裏をかいて、この人も美依を狙ってるんじゃ)
そう思いたくなるほど、この人は腹が見えない。
まぁ、俺達にハッパをかけて、こうして結ばれるきっかけをくれたのはこの人だから。
それは感謝しているけれども。