〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第6章 境界線のジレンマ《後編》❀徳川家康❀
「俺だって男だ、そりゃ女の肌が恋しい時だってある……愛しい女の肌なら、尚更な」
「そう、ですか……」
「ただ『貪る』のは良くないな、それは独りよがりの行為だ。愛し合うってそーゆー事じゃないだろ、まぁ暴走するのも経験だけどな。経験したなら、そこから学べ。じゃないと、それは無意味になる」
「……」
秀吉の言葉は、天の邪鬼な自分でも、すんなりと心に沁み入った。
やはり、昨日のは間違いだった。
体調を悪くさせるほど、美依に無理をさせ……
愛がないとは言わないが、思いやりが無かった。
あんなに大切にしている女の子なのに……
「……ありがとう、秀吉さん」
思わず、ぽつりと言葉が出る。
すると、秀吉は陽だまりのような温かい笑顔で、また頭を優しく撫でてくれた。
────…………
「美依、いる……?」
美依の部屋へ赴き、遠慮がちに襖の外から声を掛ける。
林檎も持ったし、詫びの言葉も何回も頭で繰り返した。
あとは、美依本人にしっかり謝るだけだ。
しかし……
中から、返事が返ってこない。
もう一度声を掛けても、それでも静かなままで……
もしかして、返事もしたくないくらい嫌われただろうか。
そんな嫌な不安が、心に渦巻く。
「美依、入るよ」
少し躊躇ったが、意を決して襖に手を掛ける。
そのままゆっくり開き、中に居るであろう美依の姿を、はやる心を抑えて探した。
「美依……?」
見ると、美依の部屋の中央には、布団が一枚敷かれ。
その布団に、美依は横たわり……
穏やかな寝息を立てていた。
そっと静かに近づき、布団の横で膝を折って座る。
そのまま美依の顔を覗き込むと、美依は少し顔を赤くして、すぅすぅと規則正しい寝息を立てていた。
「……可愛い寝顔、良かった………」
思わずほっと安堵のため息を漏らし、林檎を枕元に置く。
起きたら食べられるように、皮を剥いておこう。
そう思い、包丁でするすると林檎の皮を剥き、切り分けていると……
美依がこちらにコロンと寝返りを打ち、小さくふふっと笑った。