〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第55章 尋常に勝負!-秘密の恋文-❀家康END❀
「俺以外の名前が書いてあったとしたら……破り捨てて、美依にぶつかるだけです」
────迷った日もあった
幸せを願う自分に戸惑い、そして。
『全てを見せる勇気』を持てずに、想いから目を逸らした。
それでも……あの子の笑顔を手にしたい。
俺の手で、幸せにしてあげたい。
望むなら……あの子も同じ気持ちでありますように。
上昇気流に乗って、起死回生。
完全勝利を、この手に掴むんだ──……!
────…………
「家康……」
美依が目を見開き、驚いたように名前を呼んで俺を出迎える。
俺はそれを見て、ふっと笑い……
思わず、美依の頭をぽんと撫でた。
あれからずぶ濡れになった着物を着替え、夕刻の陽が落ちる頃、城の美依の部屋を訪れた。
美依には『文を読んだ誰かが、夕刻訪ねてくる』と言ってあるんだろう?
だから、俺は勝負なんて無かったかのように、ただ文を読んだという風を装って、美依を訪ねた。
「美依、俺がここに来た意味、解る?」
「文……?」
「そう、光秀さんに文を託したでしょ」
「家康が来たんだ、びっくり……」
「……?」
「いきなり想い人に文を書いてみないかって言われて…その後光秀さんが持っていったから、文がどうなったのか知らなくて。読んだ誰かが訪ねてくるとは聞いてたけど、誰が読むのか不安だったんだ」
(ふぅん、そんな経緯があったんだ……)
心の中で、小さくため息をつく。
まぁ、恋文を書いたところで、それが想い人に渡るか解らないとなれば、不安だろう。
でも、俺が来てびっくりってことは……
『予想外だった』と捉えるべきなんだろうか。
つまり、俺以外の誰かに宛てて書いたのか……?
(……っ、不安になるな、まだ希望を捨てるには早い)
手紙に書かれている名前が解らなければ、まだ俺にだって望みはある。
美依に尋ねて、なんて書いたか聞いて。
例え俺じゃなかったとしても、それでも……
気持ちを伝える事も、そいつから奪う事も自由なのだから。