〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第53章 尋常に勝負!-秘密の恋文-❀秀吉END❀
「……ごめんな、美依」
「え……?」
「湯殿なんかで抱いてごめん、しかも馬鹿みたいに欲情して、部屋に連れ帰っても、また馬鹿みたいに抱いちまって……初めてならもっと、お前を大事にしなきゃいけなかったのに」
「秀吉さん……」
するりするりと、滑るように口が動く。
なんだか、自分だけで気持ちを抱えていられなくて。
本当だったらみっともないのに、伝えずにはいられなくて……
俺は今まで抱えていた心の内を、酒の力を借りて、素直に言葉で紡いだ。
「俺……本当は大人じゃないんだ」
美依に対して抱えていた想い。
好きだからこそ、大人でいたいのに……
それを許さない、男としての本能の部分。
「本当は今日、ずぶ濡れでも真っ先にお前に逢いに行きたかった。でもそんなの格好悪いから、湯を浴びて……いつも通り、大人な俺で逢いに行こうって。自制心と言う名の体裁を振りかざした」
「……」
「お前はきっと大人な俺が好きだから、子供っぽい俺は格好悪いだろうって。だから、湯殿でも我慢した。お前を一番に考えたかった……なのに、上手くいかないな、結局」
ふわふわと本音が口から零れ落ちる。
美依は呆れるかな、でも……
こんな俺も居るって事、知って欲しい。
「お前の前だと解らなくなる。もっと曝け出したい自分と、余裕のある様に見せたい自分とせめぎ合う。お前に嫌われたくないから、いつでも大人で格好良い俺でいたいんだ。お前の事……本当に好きだから。だから…俺……」
(……何、言ってんだ俺、本当に格好悪い……)
こんな事言っても……
美依を困らすだけだと解っているのに。
溢れ出した本音は、意思に反して流れていく。
みっともないと思われたな、絶対。
こんなの俺らしくもない、馬鹿みたいな事言っちまった。
そう思って、肩を抱く美依の表情を伺うと。
美依はにっこり笑い、晴れ晴れとした表情を浮かべていた。
「ありがとう、秀吉さん。本音が聞けて嬉しかった」
「……」
「言ったでしょ、私はどんな姿の秀吉さんでも好きなの」
美依の気持ちが心に届く。
その可愛い声が……心の奥底まで響いていく。