〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第51章 花時雨と恋情のアイロニー《後編》❀石田三成❀
「政宗様、息災でいてくださいね」
「ああ、お前らもな。それから……美依」
「……なに」
「行く前に俺に言いたい事、ないのか」
(政宗様……?)
政宗様が美依様にやんわり問いかけると、美依様はそれまで押し黙っていたが……
やがて、きっと俯いた顔を上げ。
立ち上がって、政宗様の胸元をグイッと掴んだ。
次の瞬間。
────ぱちんっっ!!
「……っっ」
部屋に響き渡った音。
美依様が、政宗様を引っぱたいたのだと。
理解するまでに、暫しの時間が掛かった。
呆然とする私の目の前で、美依様は政宗様の胸ぐらを掴んだまま。
たった、一言。
でも、それは……
美依様の心からの叫びだった。
「馬鹿っ…………!!」
(美依様……)
────何も言えなかった
それでも、それが今の美依様の精一杯なのだと。
それが、ひしひしと伝わって……
でも、政宗様にもそれが伝わったのだろう。
引っぱたかれて、目を丸くしながらも。
何故だか優しく微笑んで、美依様の頭をぽんと撫でた。
「……美依」
「……なに」
「お前のこと、好きだ」
「……っっ!」
「……好きだった、だな。悪いな、俺は三成も好きなんだ」
「~〜〜……っっ!」
「俺は、お前らが一緒に居るのが好きだ。離れんなよ、絶対にな」
「当たり前でしょ、本当に馬鹿!」
そう言うと、美依様は『気軽に頭撫でないで』と政宗様の手を振り払い、再度私に寄り添って、隣に座り込んだ。
(……見事に顔、真っ赤ですね、美依様)
結局、おいしい所は全て持ってかれたな。
そう思って、変な敗北感に苦笑しか出ない。
でも、美依様は渡しませんよ、絶対に。
政宗様が奥州へ帰る理由が、本当に骨休めだけなのか。
それは全く解らないけれど……
もし、美依様を思って、二度と帰って来ないような事があったら。
その時は奥州に戦を仕掛けますからね。
言っておきますが。
私も政宗様が好きって事も、忘れないでくださいね?