〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第51章 花時雨と恋情のアイロニー《後編》❀石田三成❀
『なんて事をしたのですか……!』
『悪かった、無防備にあんな姿を晒す美依を見ていたら……止まらなかった』
『悪かったじゃ、済まされないでしょう……?!』
『……好きなんだ、美依の事が』
『え……?』
『お前のものだと解っていても、それでも諦めきれない自分が居るんだ、馬鹿だろ?』
『政宗様……』
『皮肉だよな』
『美依は俺に抱かれていても、俺なんかちっとも見ていなかった。お前の名前ばかり呼んでた。それでも…奪わずにはいられなかったんだ。みっともねぇな、自分で自分に呆れる。お前は…美依を大事にしてやれよ?』
(政宗様も、痛そうだったな……)
不思議と政宗様への怒りは沈んでしまった。
許せない気持ちはあっても、あんな顔を見てしまったら…
『殴らせろ』も言えなかった。
大切な美依様を穢されたのに。
別に政宗様に同情するわけではないが、それでも。
────あの方も、美依様を愛しているのだ
「ん……?」
その時、微かな声を漏らして。
美依様が、その長い睫毛をゆっくり開いた。
数回瞬きをして、視線がこちらに向けられる。
が。視線が絡んだ直後。
美依様はガバッと上半身を起こし、私から逃げるように、若干身を後ろに引いた。
「三成、君……」
「おはようございます、よく眠っていらっしゃいましたね」
「ここ、は……」
「私の御殿です。貴女が気を失われたので、運びました。……身体は、大丈夫ですか。昨夜眠っていないのでしょう?」
「三成君、政宗から……」
「……はい、全部聞いておりますよ」
私が、ふっと笑いかけると。
美依様は、キュッと唇を結び……
見る見る瞳が潤んだかと思ったら、その黒真珠の瞳から、大粒の雫が零れ落ちた。
咄嗟に拭おうと美依様の顔に手を伸ばす。
目元に指が触れると、美依様は大袈裟なほどに肌を震わせた。
そして、美依様は涙を拭われながら、少し俯いて。
痛々しく小さな声で、謝罪の言葉を紡いできた。