〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第50章 花時雨と恋情のアイロニー《前編》❀石田三成❀
「心配するな、三成。俺が考えたんだぞ、美味いに決まってる」
「まぁ、それはそうなのですが……」
「頑張って美味しい料理を習ってくるから、期待しててね」
「それは心配ないのですが、えぇと……」
三成君はそう言うと、チラッと政宗を見る。
どうしたんだろう、そんなに人参料理が嫌なのだろうか。
すると、政宗はその視線の意味を理解したようで……
ニヤリと不敵に笑うと、三成君の肩を叩きながら、意味深に答えた。
「お前が心配する事は何もねぇよ」
「まぁ、そうですよね……」
「まぁ、コイツは解ってないみたいだから、しっかり言って聞かせろ?美依、俺は先に行ってるからな」
政宗は三成君と私にそう言うと、すこし足早に廊下を歩いて、去っていった。
なんだろう、解ってないみたいだからって……
三成君の人参嫌いが筋金入りって事は、私も知ってるのにな。
「美依様、少しこちらへ」
私がポカーンとして政宗の背中を見送っていると。
三成君は私の手を引き、すぐ側にある部屋に入った。
そして、襖もぴったり閉めてしまうと……
私の背中をその襖に付けさせ、まるで囲うように、私の顔の横で手を付いてきた。
「美依様、いつ決まったんですか?」
「え?」
「政宗様の御殿に行くことです。いつお決めになったのですか」
「えぇと、一昨日だよ」
「何故その時、私にも一言仰らなかったのですか?」
その言葉にハッとなり、改めて三成君を見る。
三成君は怒ってはいなかったものの……
少し複雑そうな、心配しているような、そんな顔をしていた。
(そうか、三成君は……)
そこでようやく気づき、思わず心がキュンとなる。
三成君は、私と政宗が二人きりになる事を心配してるんだ。
そりゃそうだよね、自分の恋人が他の異性と二人きりになったら……
心配するのは当たり前だ。
私、なんて無神経だったんだろう。
私はふっと笑うと手を伸ばして、三成君の頬に触れ。
そして、軽く背伸びをして、その頬にふわりと口づけた。
すると、三成君の綺麗なすみれ色の瞳が驚いたように見開かれ……
私はそれを見ながら、三成君を安心させるように言葉を紡ぐ。