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〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀

第50章 花時雨と恋情のアイロニー《前編》❀石田三成❀





『その表情…煽ってんだろ、俺を』




────花時雨の、あの日


政宗は私にそう言って、その蒼い瞳を向けた。
それは熱を孕み、若干潤んでいて。

いつもの政宗ではない、と
すぐに気がついたはずなのに……

私は特に気にもせずに、
『目、赤いよ』なんて話しかけた。


それが、政宗を駆り立てたとも知らずに。


私は三成君のものなの。
三成君の恋人なの。

それなのに……

花時雨は、全てを覆って隠してしまった。
姿も、啼き声も、

崩れた私の影すらも────…………















「あ、三成君、政宗!」



暖かい春の陽が差し込む安土城。
軍議終わりで、肩を並べて歩く二人に、私は声を掛けて駆け寄った。

三成君と政宗。

温和でいつも穏やかな三成君に、破天荒な政宗。
全く性格が違うような二人だが、なんだかんだ仲が良い。

多分歳もそんなに変わらないと思うし……
三成君が、政宗を尊敬しているのも知ってるし。

まぁ、三成君に取っては、周りの武将達はみんな尊敬してるという意味もあるけれど。




「よぉ、美依」

「美依様、お疲れ様です。針子の仕事は終わったのですか?」




二人がゆったり振り向き、足を止めた。
私が近づくと、三成君は私に手を伸ばし、ぽんと頭を撫でる。



(……気持ちいいな)



大好きな恋人の手に、私は思わず笑みを返した。

三成君と私が恋仲になったのは、ちょうどひと月前の事。

お互いに惹かれあっていた私達は、当然のように想いを交わし合い、そして晴れて恋仲となった。

それは、安土城に居る人達はみんな知ってる。
だから現に、政宗は私の頭を撫でてこないでしょ?

きっと三成君の前だから、その役を譲っているんだ。




「うん、ちょうど今終わったとこだよ!今日はこの後、政宗の御殿に行くんだ」

「え、政宗様の御殿に?」

「三成、喜べ。美味い人参料理が食えるぞ」

「人参料理、ですか」

「三成君でも食べやすい人参のお料理を政宗に習うの。きっと人参嫌いが直るよ!」




私が笑って言うと、三成君はちょっと眉をしかめた。

まぁ、人参は三成君の天敵だものね。
だからこそ、美味しく食べられるように……
私は政宗の所に、習いにいくのだけれど。




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