〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第49章 私を見つけて、戯れに❀謙信END❀
「俺…あの日、あんたが見つける前に、美依の事見つけてたんだよ、あの山小屋で」
(何……?)
その言葉に、よもぎ餅を食う手が止まる。
思わず目を見開き、家康を見ると……
家康は俺に一瞥し、視線を下に落とした。
「見つけたのに、あんたに勝ちを譲ったんだ。だから、文句言う権利あるでしょ」
「……何故、そのような事をした」
「……美依が」
「美依?」
「寝惚けながら『謙信様大好き』って言ったから…大好きなあんたの夢を見てるんだと思ったら、手を出せなかった。言っとくけど、あんたの為じゃなく、美依の為だから」
(家康……)
それを聞き、頭で思案を巡らせる。
この男も、美依を深く愛しているのだと。
そんな風に、馬鹿みたいに思った。
愛する者のために、身を引いた。
確かにそれは、俺に取っては良かったが……
だが、このやり方では公平ではない。
「家康、もう一度かくれんぼをするぞ」
俺が縁側に皿を置きながら言うと、家康は小さく『え?』と言いながら視線を上げてきた。
俺は家康を睨みつけ……
改めて『宣戦布告』をする。
「勝ちを譲ったなど、ぬるい事を。俺がそのような話を聞いて、礼でも言うと思ったか」
「軍神……」
「仕切り直しだ、家康。今度こそ、俺が先に美依を見つける。奪われてたまるか。これはお前の為ではない、俺は正々堂々と手に入れねば気が済まん」
家康を見据える。
この恋敵である男を。
今度こそ、完全に叩き潰すために。
「────再戦だ、いざ尋常に勝負、徳川家康」
すると、家康はくすっと唇を弧に描き……
俺を不敵な翡翠の瞳で見ながら、言葉を紡いだ。
「そんな事言っていいの、軍神。俺は絶対負ける気はないよ」
「それはこちらとて同じだ、家康。俺は決して負けん、お前に指一本触れさせはしない」
「いいよ、上等だ」
視線を絡ませ、俺も笑みを浮かべる。
心湧き立つのは戦だ。
それが例え戦場ではなく、恋敵を叩き潰す戦だとしても。
欲しいと思ったものは、手に入れる。
正々堂々と勝ち取って……
そして、完全なる敗北をその身に刻んでやる。