〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第5章 境界線のジレンマ《前編》❀徳川家康❀
ザァァァァ……
ゴロゴロ…ゴロゴロゴロ……
強く降る雨の音と、雷の音と。
黙って身を寄せあっているから、それしか耳に入ってこない。
しかし、雷の音がだんだんと大きくなり、窓の外にその光が見えるたび……
美依が震えているのが解って。
可能であれば、直ぐにでも抱き締めてやりたかった。
「美依、大丈夫……?」
「え?」
「すごい震えてるから」
「だ、大丈夫、だよ……」
(……強がってるの、丸わかりだな)
震えた声の『大丈夫』なんて、信用ならない。
なんかもう、恥ずかしいとか、男の前だからとか。
そんな事を言っている余裕はない気がする。
大丈夫、自分はまだ我慢出来る。
少し抱き締めるくらい……大丈夫だ、多分。
そう思って、美依の方に身体ごと振り返った。
「美依、良かったら……」
『良かったら、腕の中においでよ』
そう言ってあげようとした、
刹那。
バリバリ……ドドォォ────ンッッ!!!
「きゃぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
窓の外が閃光に包まれるのと全く同時に、轟音と地震のような地響きが襲った。
それと同時に美依が悲鳴をあげ、振り返った胸にしがみついてくる。
いきなりの事に戸惑い、思わず美依の肩を掴むと。
想像していたより、もっと華奢だった肩に、違う意味で心臓が跳ね上がった。
「美依……」
「家康、落ちたよ、雷!今絶対、どっかに落ちた!」
「……っっ、美依、落ち着いて……」
「だ、だって、いえや……!」
ピカッ…バリバリバリバリ……ッッ!!
「いやぁあぁぁぁぁぁっっ!!」
「うわっ……!」
再度、真上で鳴った雷。
窓の外が、白んだと同時に襲った轟音。
しかし、そんな事は、どうでも良かった。
今の状況に比べれば。
雷なんて、どうでも。
「美依っ……!」
美依は思いっきり首にしがみつき。
その反動で、身体は床に倒された。
美依が覆いかぶさる形で、押し倒され……
柔らかな身体の感触が、濡れた襦袢を通して。
晒した肌に、直接伝わってくる。